2025.3.14
なごや福祉用具プラザでは、ご利用者の皆さまからさまざまなご相談をいただいています。今回は、そうしたご相談の一例を紹介いたします。
靴選びのお悩み
プラザへ来所される方からの相談で、どのような靴を選んだらよいかと尋ねられることがあります。 靴のサイズが適切でない、目的とは異なる靴を選ぶと、つまずきや転倒の危険性が高まる、靴擦れ等の足のトラブルの原因になるなどの不具合が起こりやすくなります。 そこで様々な機能を持った靴のご紹介や、目的別の選び方、靴のサイズのポイントをご紹介します。
靴を選ぶためにまず考えたいこと
靴屋さんなどでは、サイズを合わせることはもちろん、歩きやすい靴、おしゃれやアウトドア用など、目的や用途に合わせて選ぶことが多いと思います。例えば、山登りをするのにハイヒールを選ばれる方はいないですね。 福祉用具としての靴も基本的には同じ考え方で、靴にはさまざまな種類がありますが、まずどんな時に使用するのか、どんな機能を必要とするのかを検討していきます。
どんな時に使用するのか
など
外出用
運動用
室内での移動用
足の保護、保温用(室内用)
どんな機能を必要とするのか【機能別の特徴(例)】
保護・保温
柔らかく、温かいものが多い(主に室内履きで使用される)
靴裏も柔らかいことが多く、歩行には向かないものが多い
足の変形・変化に対応
中敷きの工夫がされている
伸縮性のある生地が使われている
面ファスナーなどで調整しやすい
転倒防止・歩きやすい
つま先部分が上がってつまずきにくい
足首の安定性を高めるため、かかとがしっかりしている
甲の部分がしっかりおおわれている
紐や面ファスナーで調整しやすいものがある
装具の上から履くことができる
開口部分が大きく開けられる
靴の幅が広い
面ファスナーで調整できる
サイズ合わせについて
目的や用途に合った靴を選ぶことができたら、履く人の足に合ったサイズを検討します。 歩行を目的として靴を選んだ場合、できれば立った状態で足の長さ(足長)と足の幅(ワイズ)を測り、それを目安にサイズを選びます。 両足に履いて実際に歩いてみることが望ましく、以下の〜を確認します。
❶
❺
つま先に10~15㎜程度の余裕があること
❶
足の指が動かせること
❷
足の付け根やつま先に圧迫感や痛みがないこと
❸
足のかかとと靴のかかとがあっていること
❹
足が靴の中で遊んでいないこと(大きすぎないこと)
❺
靴の履き方
靴の中に足を入れます。かかとを踏みつけると足首の安定性が落ちてしまうので、 靴ベラを使用したりして、踏みつけないように工夫します。
❶
かかとを合わせる(つま先を上に向けてかかとでトンと床をたたく)。
❷
紐や面ファスナーでしっかりと甲の部分を止める。
❸
立ってみて少し足踏みをして不具合がないか確かめる。
❹
相談員の独り言
家に上がるときに靴を脱ぐという習慣や草履や下駄の文化的背景の中で、きちんと靴を履くことに対して無頓着な部分が日本人には多い気がします。今でもご自身のサイズをきちんと測ったことのない人が多く、靴の着脱のしやすさや見た目などで選択しがちです。 体のどこかに不調があるときにこそ、正しい靴のサイズで目的・用途に合った靴を選択することで歩きやすく安全に移動できる場合があります。 適した靴を一緒に考え、プラザに相談に来てよかったと思っていただけることに喜びを感じます。日々笑顔で皆様の来館やご相談をお待ちしたいと思います。
排せつのお悩み
みなさんも、外出先でトイレに行きたくなったが、トイレが見つからず我慢して、ギリギリ何とか間に合った…!という経験を一度はしたことがあると思います。 これは「トイレが間に合った」例ですが、「トイレが間に合わなくなった」という相談をよくお受けします。ひとくちに「間に合わない」といっても、詳しくお聞きすると、困っている内容はさまざまです。 そこで、排尿のお困りごとの相談例と、その対策についてご紹介します。
認知症や目の見えづらさなどにより、トイレの場所がどこかわからない
相談例❶
実はトイレの表示自体が、その方にとってわかりにくい場合があります。 人型のマークやWCなどの表示がトイレだと認識しづらい方には、大きな紙に大きな文字で「便所」と書いて貼り、矢印で誘導してみたら、トイレにたどり着けるようになった例があります。また、トイレのイラストや写真が表示されていると認識しやすいという方もいます。 廊下などが暗いことでトイレの場所がわかりにくくなる場合もありますので、足元への照明設置、蛍光シールでの誘導、トイレまでの通路は電気をつけたままにしておくなどの対応でスムーズにたどり着ける場合もあるようです。
筋力低下や運動機能の低下により、立ち上がりや歩行に時間がかかり間に合わない
相談例❷
室内にあるローテーブルやテレビ、ドアノブなどにつかまって立ち上がったり、手すりのない壁を伝って歩く場合があります。いずれも不安定なためにかえって動くのに時間がかかったり、転倒の危険性が高くなります。 その方の身体状況や住宅事情を考慮する必要がありますが、立ち上がり用に置き型の手すりを置く、移動時は家の中でも杖や歩行器を使う、廊下に手すりをつけるといったご提案をします。
トイレ内でズボンなどを脱いでいる間に尿が出てしまう
相談例❸
トイレ内での衣類の着脱に時間がかかる場合、衣類の工夫もひとつです。 普段からボタンやファスナーのあるズボンにベルトを締めている方には、ベルトを外してみる、ウエストをゴム製のものにしてみる、裏地がサテンのようになめらかな素材のズボンをはいてみる、といったご提案をします。 また、衣類の工夫とは異なりますが、トイレに到着してから排せつまでの工程を短縮するという点では、トイレの扉を出入りしやすくする、トイレのフタを開けておく、スリッパを履かないなどもひとつの方法です。
尿意を感じると我慢できない、トイレのことを考えただけで尿が出てしまう
相談例❹
❶~❸のような生活上の工夫だけでは対応が難しい❹のようなの症状を『切迫性尿失禁』といいますが、早めに泌尿器科などの専門医への相談をお勧めしています。 実際の排尿状況を知るために3日ほど、排尿の時間や回数、水分摂取状況を記録した「排尿日誌」を受診時にご持参ください。診断の参考になります。
相談員の独り言
このように、排せつのお困りごとは人それぞれ、対策もさまざまです。プラザでは、状況に応じて、どのような工夫ができるかを相談者と一緒に考えてご提案しています。 排せつの相談は恥ずかしくて気が進まないなぁという方は、来所の他に電話での相談もできます。どうぞお気軽にご相談ください。
「あいち・なごや 介護ロボット地域フォーラム・福祉用具フェスタ」開催