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2023.1.13

本学卒業生が、KITTE名古屋 クリスマスイベント、「暗がりのクリスマスツリー」を企画、演奏会を行いました

本学卒業生が、KITTE名古屋 クリスマスイベント、「暗がりのクリスマスツリー」を企画、演奏会を行いました  本学デザイン科卒業生の株式会社スペース 木村ユカさん、石黒雄也さんが中心となり企画されたKITTE名古屋 クリスマスイルミネーション「暗がりのクリスマスツリー」の会場にて、12月24日(土)に音楽領域卒業生のヒラウチマイ スペシャルバンド(Vo.ヒラウチ マイさん、Gt. 須賀 奏太さん、B.中島 玄太郎さん、Perc.松原 瑞季さん)、25日(日)は音楽学部卒業生ユニットNUA strings quartetto(Vc. 城間拓也さん、Vn. 村越久美子さん、Va. 大竹温子さん、Vn. 近澤知世さん)が「暗がりの音楽会」として演奏を披露。それぞれ30分と限られた演奏時間でしたが、ロマンチックなクリスマスの夜に彩りを添えました。  KITTE名古屋 クリスマスイルミネーション「暗がりのクリスマスツリー」は、通常の電飾を使うのではなく自動車部品の製造過程で発生した廃棄プラスチックを、アップサイクル製品として製造された蓄光プラスチックを使って作られたもので、柔らかな光が幻想的なクリスマスツリー。アトリウムの環境照明を計画的に消灯して“暗がり”を作り、蓄光プラスチックのささやかな灯りを楽しめるようにしました。企画した木村さんは「愛知県は工業集積地であり、産業用の電力消費が日本でもっとも高くなっています。そうした現状をもっと知ってもらい、環境問題や節電とリサイクルについて考えてもらえるように企画しました」といいます。  その会場で催されたのが「暗がりの音楽会」。灯りを消した中で、蝋燭に火を灯し一層幻想的な雰囲気の中、演奏が行われました。24日のヒラウチマイ スペシャルバンドは、ポップス系の曲、25日 NUA strings quartettoは弦楽四重奏ですが、どちらもクリスマスらしい演目。薄明かりのイルミネーションと華やかな演奏に、道行く人々も思わず足を止め、ツリーを囲む2階、3階の吹き抜けにも人が集まり、演奏に聴き入っていました。  卒業生がクリスマスイベントを企画と音楽で、大いに盛り上げました。

2023.1.6

テキスタイルデザインコース、村瀬弘行氏、古川紗和子氏をお招きし、有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクトほか、特別講義を実施

テキスタイルデザインコース、村瀬弘行氏、古川紗和子氏をお招きし、有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクトほか、特別講義を実施  デザイン領域 テキスタイルデザインコースでは、2022年12月21日、SUZUSAN クリエイティブ・ディレクター 村瀬弘行氏、ミラノ在住のフリーランスデザイナーの古川紗和子氏をお招きし、「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」で制作した商品とブランドの講評会を開催、加えて、バッグデザイナーとしてVERSACE、 BOTTEGA VENETAといったラグジャリーブランドで活躍してきた古川さんのお話を伺いました。  「有松絞り手ぬぐいブランドプロジェクト」は例年、テキスタイルデザインコース2年生が取り組んでいる課題で、有松絞りを使ったオリジナルデザインの手ぬぐいを制作し、毎年6月に行われる「有松絞りまつり」の会場で販売するというプロジェクト。商品のブランドを考案し、ブランドコンセプトに基づいて商品を企画、制作、パッケージやショッパーバッグも制作し実際に販売する店舗もプロデュースする実践的な演習です。例年、企画の最初の段階から村瀬さんに見ていただいていますが、今回は完成した商品を古川さんにも見ていただくことになります。  学生らは2つのグループに分かれそれぞれにブランドを設定しており、今年は「永縁」(えにし)と「IRUMATS」の2つのブランドとなりました。それぞれにブランドのイメージを決めるために制作したムードボードと想定する顧客3名を具体的に記したバーチャルカスタマーのボードを掲げ、配色とデザインコンセプト、包装とショッパーを展示、プレゼンテーションを行いました。  「永縁」は、伝統と人のかかわりを感じさせるレトロなイメージで、カラフルでありながらどこか懐かしいイメージです。想定する顧客も美術館巡りが趣味の若い女性や、手芸やパッチワークが趣味の60代の女性などを想定し、ブランドイメージに沿ったものになっています。クラフト紙を使ったショッパーには、レーザーカッターを使って精密にブランドロゴが切り抜かれており、凝った作りに村瀬さん、古川さんからも思わず感心する声が上がっていました。販売時に着用するTシャツとちょうどスマートフォンが入る大きさのポシェットには、古川さんからキットとして販売すると良いのでは、との評価をいただきました。  「IRUMATS」は、有松(Arimatsu)と祭り(Matsuri)のアナグラムから作られた名前で、伝統的でありながらもどこか都会的な新しさがあることがコンセプトです。バーチャルカスタマーにアメリカ人が含まれていることはこれまでになく、時代性を感じます。学生らは板締め絞りの幾何学模様の連続性と不思議さに感動し、それをデザインに取り入れたとのこと。模様が不揃いだったり色の滲みや淡さが絞りの魅力といえますが、グラフィカルでクッキリしたデザインを取り入れており新鮮さを感じさせます。学生らは、Tシャツをサンプルで作っていましたが、B反(商品にできない外れ品)を使い、雑貨を生産販売したいと意欲的です。村瀬さんからは、「永縁」とはまた異なったコンセプトでファッションのテイストを感じユニーク、選ぶ楽しさがある、との言葉をいただきました。  講評としてお二人から、「どちらのグループも非常にクオリティが高く、販売の場を想定し衣装や小物を作っていることも良い、どちらもとても良いブランドになっている」と評価をいただきました。加えて、「アパレルとしてやっていくには、商品力とブランド力、さらに販売力の3つが重要。ブランドを後押ししてくれるのは販売力であり、ここまでで商品の魅力は十分できているので、ここからは販売をどうするか考えていって欲しい」と締めくくりました。  講義の後半は、古川紗和子さんのお話。長岡造形大学テキスタイルコースを卒業後、イタリア ミラノのドムスアカデミー マスターオブファッションコースで学び、DIOR HOMME、GIANFRANCO FERRE、VERSACE、BOTTEGA VENETAでバッグデザイナーとして働くことになった経緯、さらに8年間勤めたBOTTEGA VENETAでの勤務の様子や、通常では見ることのできない資料室の様子、デザインスケッチなど貴重な写真とともに説明していただきました。第一線で活躍するデザイナーの言葉に、学生らは興味津々、熱心に聞く様子が印象的でした。古川さんは「学生時代はツモリチサトやマルニなどのファッションが好きで、バッグのデザイナーになるとは考えていなかった。ドムスアカデミーで教わる先生が現役で働くバッグデザイナーでその道に入ることになり、運や縁がとても大事」といいます。二十歳の頃は海外のブランドで働くと考えたこともなく、今、学生が考えていること以上のことができるはす、夢を持っ てやっていって欲しい、とエールを送りました。  最後に、村瀬さんと古川さんの対談でSUZUSANから発売される古川さんデザインのバッグの試作品をお披露目し、学生から質問に答え交流を楽しむなど、盛りだくさんの特別講義となりました。 永縁 IRUMATS

2022.12.31

こどもデザインだいがく「パーティーをひらこう」を開催

こどもデザインだいがく「パーティーをひらこう」を開催  2022年11月26日(土)、27日(日)、12月10日(土)、11日(日)の4日間に渡り、西キャンパスにて、こどもデザインだいがく「パーティーをひらこう」を開催しました。「こどもデザインだいがく」は。デザインのさまざまなことについて体験し知ってもらうことを目的に、2018年から始められたワークショップ。今回で5回目の開催となります。今回は、本学OGの PLAY! PARKキュレーター 小栗里奈さん、デザイン領域 西岡毅講師が中心となり、有志の学生、OG、そして参加する子どもたちも加わり、パーティーを企画することからはじまり、必要な飾り付けやゲームなど必要なものを作って準備、パーティーを開催します。  初日の11月26日は、パーティーの企画を考えようということで、キッチンカーで出すお菓子のメニューを考案。食べるのに必要な紙ナプキンにレーザー彫刻機でかわいい絵柄を入れたり、乾杯のグラスにリューターで模様を彫ったりと、さっそく制作にも取りかかりました。グラスを使うのならコースターも必要と丸太を輪切りにしたコースターにレーザー彫刻機で模様を入れ、キッチンカーにもガーランドで飾り付けを施します。ガーランドは子どもたちが描いたイラストをコピーして切り抜いたものを使い、可愛らしく手作り感満載。パーティーにはゲームも必要と、クラッカーを作り、お菓子の入ったピニャータ(メキシコのお祝いで使われるくす玉)も用意、宝探しで遊ぶイースターエッグハントと、さまざまなゲームの準備も進めます。パーティーの招待券ももちろんお手製、11日のパーティー直前まで、準備が進められました。  印象的なのは創作に向かう子どもたち。リューターやグルーガンなど、丁寧に扱う必要のある道具もしっかりと使いこなしています。家庭ではなかなか体験できないことでもあり、熱心に作業に取り組んでいました。創作に関しては、風船あり、紙粘土あり、針金、紙皿、ダンボール、リボンに色紙とあらゆる素材、道具もレーザー彫刻機、リューター、グルーガンと大学にある機器を使い、思い切り創作を楽しみました。  11日午後3時、パーティーの時間になると招待状を持った親御さんや友達が集まってきました。乾杯しクラッカーを鳴らしてパーティーがはじまります。飾り付けの出来映えに声を上げスマートフォンで写真を撮る親御さんたちの姿があちこちで見受けられました。準備しておいたゲームも、大いに盛り上がりました。ピニャータはなかなか割れずスイカ割りの要領で割ることになりましたが、子どもたちが自由にルールを作り楽しく進行。まさに、遊びの中に創作があり協調がある、ワークショップが目指すものが現れているように感じました。  好天に恵まれ暖かな日曜日、日暮れまでパーティーを楽しみました。

2022.12.23

特別客員教授 宮川彬良氏による、ウインドアカデミーコース 公開リハーサルを開催

特別客員教授 宮川彬良氏による、ウインドアカデミーコース 公開リハーサルを開催 ダイジェスト版  2022年12月15日、東キャンパス3号館ホールにて、ウインドアカデミーコース・弦管打コース 特別客員教授 宮川彬良氏をお迎えして、公開リハーサルを行いました。宮川氏は、大阪フィル・ポップス・コンサートの音楽監督・常任指揮者をはじめOsaka Shion Wind Orchestraの音楽監督、また、NHK Eテレ「クインテット」、BS「宮川彬良のショータイム」などのTVやメディアなどへの出演、「マツケンサンバⅡ」や「第68回紅白歌合戦」のオープニングテーマを作曲するなど、さまざまな音楽シーンで活躍する作曲家・舞台音楽家でありエンターテイナー。あらかじめ課題曲として練習してきた2曲を演奏、公開の場で作曲者自身の指導で演奏がさらに高まり、仕上がっていく過程を披露しました。  曲目は、おなじみの「マツケンサンバⅡ」と、2021年度全日本吹奏楽コンクール課題曲でもある「僕らのインベンション」、もちろんどちらも宮川氏の作曲です。まずは、演奏の実力を把握したいと学生の指揮で演奏を聞きます。2曲を演奏し、まずはマツケンサンバⅡから指導が始まりました。指揮する学生からは、リズムの一定に保つこととシンコペーションに気を配ったとの発言がありました。しかしながら、打楽器の安定感がもうひとつ、リズム隊に余裕がなくいっぱいいっぱいになっていると宮川氏は指摘。指揮とドラム、ベースだけで演奏を行い、そこに打楽器を加え、リズムを確認していきます。聞いている他のバンドメンバーがリズムを取っていないことにも着目し、お客さんは何を聞きに来ているかが問題であり、この曲では鑑賞するだけでなく心の中で踊っている曲と説明。ビートに乗って安心して音楽を聴いており、踊らせる演奏が必要であるといいます。リズムを安定させ、宮川氏が全身を使って指揮を行うと、演奏はビート感のある楽しいものに様変わりしました。リズムと同時に、オーケストラのように大きな編成でもバンドであることに変わりなく、音楽を作っていくことにはメンバー、一人ひとりの気持ちやリズムへの乗り方が重要であることに改めて気付かされます。演奏が温まってきたところで塚本伸彦 准教授とソプラノ歌手の加藤恵利子さんがステージに加わり熱唱、会場を大いに沸かせました。  2曲目の「僕らのインベンション」でも同じようにまずは学生が指揮し、それをもとに手直ししていきます。指揮する学生は、譜面どおりに演奏するように気を配ったといいます。宮川氏は、あえて大きく抑揚を付けて指揮し、しっかりしたベースがあるからできることと、さらに楽曲の楽しさを引き出すため曲の背景を説明をします。インベンション(発明)は、音を発明してしている曲であり、主音と導音の関係性を示しメロディーを追いかけていく旋律が交互に交わり続ける曲であると解説。2つの旋律が重なりあう部分が曲の面白みで、パートによってはフルートとクラリネットが掛け合いを行い、旋律が常に重なり合う音楽理論を構築した音楽の基礎を讃えている曲と説明します。その上で、ここでは大きな帆船が入港してくるイメージであるとか、一軒一軒玄関のドアを開けているイメージ、というようにパートごとに絵本を開くような視覚的なイメージを伝えてくれます。「譜面に書けるのは考えていることの60%ほど」と説明しますが、作曲者から曲の背景について学ぶことのできる非常に貴重な機会となりました。楽曲について研究することの意味の大切さを感じさせました。  当初、質疑応答の時間を設ける予定でしたが、濃い内容にあっという間に時間は過ぎ、公開リハーサルは終了となりました。2曲の演奏でしたが、音楽への興味が一層わき起こる有意義なリハーサルとなりました。 公開リハーサルの全編はこちらからご覧いただけます

2022.11.19

カーデザインコース 特別客員教授 永島讓二氏、展覧会「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」開催、ギャラリートークを行いました

カーデザインコース 特別客員教授 永島讓二氏、展覧会「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」開催、ギャラリートークを行いました  2022年11月4日(金)~15日(火)、Art & Design Centerにて、カーデザインコース 特別客員教授 永島讓二氏のイラスト展「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」を開催、12日(土)にはArt & Design Center Westにて、カーデザインコース、インダストリアル&セラミックデザインコースの学生向けにギャラリートークを開催しました。  永島譲二氏は、BMW AGにてデザイン部門 エクステリア クリエイティブ ディレクターを務め、BMW Z3(1996)、5シリーズ(1996)、3シリーズ(2005)などを手がけ、BMWの生産車からショーモデルまでほとんどのデザインをまとめる立場で現在のBMWデザインを作り上げたデザイナー。また、デザイナーとしての活動以外にもカーデザイン史を研究、カーグラフィック誌でのエッセイとイラストを連載するなど、多彩な活動を行っています。  今回のイラスト展は、2018年11月に開催されたイラスト展「ヨーロッパ自動車人生活」の続編ともいえるもので、多数の新作を加えArt & Design Center West、East合わせ、100点以上の作品を展示しています。ギャラリートークでは、イラストのクルマについて、そのクルマについてのエピソードや個人的な思いなどを交え、1時間ほどお話しいただきました。  一枚一枚、それぞれのイラストに思い入れがあり、穏やかな口調でユーモラスに語られる内容が面白く、興味深く楽しいギャラリートークとなりました。参加者が学生とあって、水彩画で描くコツや技法についても簡単に説明。透明水彩と不透明水彩の使い分けや展示作品と同じだけの失敗作があることなど、たくさんの枚数を描いていることを説明していただきました。クルマについての思い出のお話も面白く、ランチア フルビア スポルト ザガートでは、子どもの頃に駐車場で見かけクルマの周りをグルグルと何周も廻って観察したことや立体作品でも音楽や小説のように感動できることを知るきっかけとなったことなどが語られました。デザイナーになる動機ともいえるお話で、非常に感銘を受けました。また、ブレッド&バターカーと呼ばれる、生活の道具としてのクルマたちのイラストが印象的で、その背景にある生活や文化にも言及し、永島氏のクルマというプロダクトへの深い思索と愛情を感じさせました。  永島氏のイラストの特長ともいえるのが写り込み。デザイン画でもボディへ写り込む光の反射が描かれボディの曲面を表現していますが、イラストでは写り込みに情景が描き込まれており、そのクルマが置かれている場所やシチュエーションを想像させるようになっています。ときには海辺、ときには華やかなコンクール・デレガンスの会場と、その状況がクルマのキャラクターと相まって、デザイン画とはまた異なった味わい深いものになっています。。あらゆる国、あらやるジャンルのクルマが描かれ、クルマが好きでカーデザインという職業に就いた人であることをあらためて感じさせる展覧会とギャラリートークとなりました。 イラスト展「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」展示作品 Competition Sports Luxury Bread and Butter Power of America France <.div> Tradition 展示作品紹介・ギャラリートーク 実技特別授業・デザイントーク(公開講座)

2022.11.19

カーデザインコース 特別客員教授 永島讓二氏 実技特別授業とデザイントーク「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」を開催

カーデザインコース 特別客員教授 永島讓二氏 実技特別授業とデザイントーク「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」を開催  2022年11月4日(金)~15日(火)、Art & Design Centerにて開催されたカーデザインコース 特別客員教授 永島讓二氏のイラスト展「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」にあわせ、11日(金)・12日(土)の2日間、カーデザインコース 特別客員教授 永島譲二氏による実技特別授業を実施、12日(土)には西キャンパス B棟 大教室にて公開講座としてデザイントーク「ヨーロッパ自動車人生活Ⅱ」を開催しました。  永島氏はドイツ ミュンヘン在住、2018年に本学で展覧会とワークショップを開催していますがコロナ禍で途絶え、4年ぶりの開催となりました。  実技特別授業には、カーデザインコースの学生に加え、インダストリアル&セラミックデザインコース(ID)の学生も参加。IDの学生にとっては不慣れなクルマのスケッチですが、永島氏から直接指導を受ける貴重な機会となりました。  実技特別授業は、永島氏がまず描き方をデモンストレーションしてみせ、学生が描いている様子を見てスケッチにアドバイスしたり、ときには直接手を加えるという、個別レッスンといった型式で進められます。画材は、ボールペンとカーデザインの世界で広く使われているマーカーのコピック。線画を練習する学生、陰翳をつけて表現する学生、思い思いのスケッチに取り組みました。  講義のはじめに、永島氏が描きながら、その技法を説明しました。クルマのシルエットを描き、そこへ影を加えていきます。影をつけることで、線だった絵が面として浮かび上がり、立体を感じさせます。さらに色を加えることでスケッチに重さが加わり、クルマの存在感が出てきます。数分という短い時間で鮮やかに立体が描かれる技術に見とれるばかりです。永島氏のイラストでもそうですが、ボディへの写り込みが特徴的で、線でありつつも面を意識させるように表現されています。実際に描いているところを見ると、面を想像しながら描いていることがよくわかります。  デモのあとは学生がスケッチを始め、それを見ながら個別の指導となります。スケッチを見ながら永島氏が車種にまつわる談話をしますが、それがなんとも印象的。過去に所有していたクルマの話など、個人的な思い入れがデザインに生かされていることが伝わってきます。また、学生によっては、ポートフォリオの作り方についても説明。BMW AG勤務の頃には、デザイナーの採用にも携わっており、その経験を生かしアピールすべき点などを説明していただきました。会話の一つ一つが非常に有用な経験になったのではないかと思われます。  学生の作品を見ながら、発想の面白いスケッチにはさらにアイデアを良くするブラッシュアップの案も閃いているようで、学生のスケッチに自身のアイデアを書き加えていく様子も見受けられました。  講義の終わりに、学生らのスケッチを壁に掲示、皆で見ながらアドバイスをいただきました。壁に貼ってみると、パースがよくわかり描いていたときにはわからなかった部分がよくわかります。あらためて、一度離れて客観的に見てみる視点も大事な事だと納得しました。ここでも、面白いアイデアや可能性を感じる作品にどんどんアイデアを付け加え、活発な意見交換が行われました。  学生らは適度な緊張感とともに集中してスケッチに取り組み、非常に濃密な時間が流れました。永島氏からの薫陶を受け、大いに刺激を受けた特別講義となりました。  12日(土)のデザイントークには、公開講座とあって学生のみならず、客員教授 木村徹氏(元トヨタ自動車)をはじめ、自動車関連企業で働くカーデザイナーも多数受講。会場には社会人も数多く見受けられました。  はじめに、永島氏から自己紹介としてBMWで働くようになるまでの経緯が語られました。大学卒業後、親類がいるアメリカデトロイトを訪れ、ウェイン州立大学大学院へ進学。大学に講師として来ていたGM(ゼネラルモーターズ)のデザイナーと出会い、就職の方法(誰にポートフォリオを見せ会うべきか)を聞き、GMへ入社。希望を出してGMの子会社であったオペルへ配属となります。オペルでは、15名ほどのデザイナーが7、8ヶ国から集まっており公用語は英語、80年代の当時すでにグローバル化していたといいます。その後、ヘッドハントされてルノーへ。フランス車は変わったクルマばかりだと思っていたところ実際にパリで見るととても良く見える、その面白さに魅了されたといいます。3年ほど働き、ドイツへ戻りたくなりBMWへ。学生時代、いろいろな自動車メーカーに就職希望の手紙を出したところ、英語の文面にもかかわらずその国の言葉で返してくるのが通常だったといいます。そんな中、英文で返答をくれたのはボルボとBMWだったといいます。そのことが好印象でBMWを選択、以降、定年退職するまで務めます。  講義の主題は、手を使って描くことの意味、です。デザインや美術の世界でもコンピューターを使うことが増えてきましたが、とりわけ工業デザインの世界では、手で絵を描くことよりコンピューターを使うことが普通になっています。そうした現状を踏まえ、永島氏はコンピューターで制作したカーデザインのスケッチを大量にスクリーンに表示していきます。続いて、キャリア最初のGM時代のスケッチを表示します。デジタルで制作されたスケッチは同じようなテイストになり、メーカーは異なれど特色がわかりにくくなってきます。ところが手描きのスケッチでは、メーカーどころか描いたデザイナーによってタッチが異なり、デザイナーごとに異なった妙味が感じられます。そして、その味がデザインの個性となり製品になっても残っています。また、特に裸婦にスケッチしたもののほうが個性が強く、最初に浮かんだアイデアを手早くカタチにしたもののほうが強さを感じさせるといい、数々のラフスケッチにはその通りの個性があります。 手で描くことの優位性を話す永島氏ですが、BMWでは意外なことにデジタル推進派だったそうで、進んでコンピューターをデザインに取り入れていたとのこと。デジタルでは修正やバリエーションの制作が簡単で大きなメリットもあり、これからはデジタルとアナログの良い部分を補うように使うべきであり、その方法をさらに探求していく必要があると提言しました。  質疑応答では、現職のデザイナーからも質問が上がり、自動車製造の専門的な話も出ました。印象的だったのは、海外から見た視点です。日本人は細かなところを見る癖があり、もっと意識して全体を捉えるようにすべきといいます。また、日本人が思うより世界は多様で入り交じっているといいそのことをもっと知っておくべきと説き、講義を締めくくりました。 展示作品紹介・ギャラリートーク 実技特別授業・デザイントーク(公開講座)

2022.11.10

テキスタイルデザインコース JRタカシマヤ「やさしい暮らしと彩るコモノたち」に出店

テキスタイルデザインコース JRタカシマヤ「やさしい暮らしと彩るコモノたち」に出店  デザイン領域 テキスタイルデザインコースでは、2022年10月27日(木)~11月1日(火)ジェイアール名古屋タカシマヤ 10階 催会場にて開催された「やさしい暮らしと彩るコモノたち」に出店、有松絞りの手ぬぐい、尾州産の装飾糸を使ったファンシーバンドなどを販売、リストバンドを作るワークショップを開催しました。  「やさしい暮らしと彩るコモノたち」は、SDGsに取り組みアップサイクルでできあがった商品や持続可能な農法で育てられた作物を使った食品など、おしゃれで便利なエコグッズやエシカルグッズを販売するイベント。その中に、東海地方の大学生がSDGsテーマに作った商品を集めた「やさしい暮らし学園祭」コーナーが設置され、そこへテキスタイルデザインコースが出店しました。  テキスタイルデザインコースが販売する商品は、昨年(2021年)全国の伝統工芸品が集う「KOUGEI EXPO IN AICHI」にも出展した有松の豆絞りにシルクスクリーンプリントを加えた手ぬぐいと、ウールの生地を織る際に模様のために使われる装飾糸を使って作られたファンシーバンド。豆絞りの手ぬぐいは、例年、授業でもお世話になっている「張正」さんの、製品にならなかったB反を再利用してプリントを加えたもの。手ぬぐいを半分の長さでカットし、ハンカチなどとしても使いやすいサイズになっています。また、装飾糸も尾州で使われなくなったものやオリジナルの生地を制作した際の余りを再利用したものと、SDGsにふさわしいものとなっています。  期間中、テキスタイルデザインコースの学生が当番で入れ替わり、店番をしました。天候にも恵まれた土日にはたくさんの人が訪れ、学生らは対応に追われました。有松絞りや板締めという技法について説明したり、尾州のウール生地や模様・装飾糸などについて紹介したり、お客さんとのコミュニケーションも貴重な経験となりました。本学のブースに足を向ける方々は有松絞りをよくご存じの方も多く、「豆絞りは知っていたけど、若い人が手を加えるとおしゃれになるわね」と感心する声も聞かれました。  ワークショップでは、尾州の飾り糸を使ってリストバンドを作成しました。使う糸を選ぶことに加えバンドの長さも自由に調整でき、販売している商品よりもお客さんの好みに合ったものができるよう学生らが対応しました。  学生ブースの「やさしい暮らし学園祭」には東海地区の大学12校が出展、学生同士の交流も生まれ、華やかな催しとなりました。

2022.10.24

秋季生涯学習大学公開特別講座 「ガンビア料理店の名物おかみはガンビア名誉総領事!?」を開催

秋季生涯学習大学公開特別講座 「ガンビア料理店の名物おかみはガンビア名誉総領事!?」を開催  生涯学習センターでは、本学にもほど近い名鉄中小田井駅、駅前にあるガンビア料理店「Jollof Kitchen(ジョロフキッチン)」のおかみさんでありながらガンビア共和国名誉総領事も務めるビントゥ・クジャビ・ジャロウさんをお招きし、「ガンビア料理店の名物おかみはガンビア名誉総領事!?」と題し、異文化国際交流講演会を開催しました。当日、2022年10月15日(土)には東キャンパス1号館701教室へ多くの方にご来場いただきました。学生と留学生に加え、生涯学習講座とあって幅広い年齢の受講者にも参加いただき、普段の講義とはまた異なった、演目通りの多様性に満ちた会場となりました。  講演に先立ち、地域・社会連携部 田中部長から、ジャロウさんとガンビアについて紹介がありました。ガンビアは、年齢が50代以上の方なら記憶にある1977年制作のTVドラマ「ルーツ」の主人公クンタ・キンテが生まれた国。ドラマのヒットを受け実際に奴隷貿易の拠点となった島がクンタ・キンテ島と改名されユネスコの世界遺産に登録されているといいます。講演は英語と日本語を織り交ぜて行われ、同時通訳を国際交流センター長 松崎久美 准教授が務めました。紹介を受けていよいよジャロウさんが登壇、ジャロウさんは、エメラルドグリーンが美しいカラフルなプリント生地を使ったガンビアの民族衣装を身にまとい、会場は一層華やかな雰囲気になりました。  講演は、生い立ちと家族について、日本に来た理由と数年間の経験、夢とガンビア総領事館についての3つをお話しいただきました。  ガンビア共和国は、西アフリカに位置するガンビア川流域、セネガルに囲まれた小さな国。面積は11,300平方キロメートル、人口241万人というので、面積は岐阜県ほど、人口は名古屋市ほどとなります。西アフリカの国々の多くはフランスの植民地でしたが、ガンビアはその中にあってイギリスの植民地であったため公用語として現在も英語が使われています。1965年にイギリスから独立、英語が使えること、またTVドラマの影響もあって、現在はヨーロッパからの観光地として人気が高まっているといいます。ガンビア川の上流では稲作やとうもろこし、ピーナッツが栽培され、大西洋に近いところでは漁業が盛んとのこと。魚と米を食べることで日本とも共通する食文化があります(ジャロウさんは大のお寿司好き、旦那さんは焼き魚がお好きだそうです)。  ジャロウさんは、7人兄弟の長女として生まれ14歳のときに母を亡くし、妹、弟の面倒を見ながら高校へ通ったといいます。24歳でエンジニアであるご主人と出会い結婚、ご主人の勉強のため名古屋へ引っ越します。最初、日本では黒人である自分は奇異に見られ、非常につらかったといいます。「日本人はどう接していいのかわからなかっただけかもしれませんが、自分にとって暗い時期」でしばらくイギリスにいる兄弟のところに身を置いたこともあったそうです。再び日本に戻り生活を続けるうち、知り合いや支えてくれる人が増え、日本に馴染んでいったとのことです。  二人の子どもを生み日本で育てるなか、日本の文化との衝突もあったといいます。ガンビアでは学校へ行くにも髪の毛を結って身だしなみを整えることが大事なことなのですが、日本の小学校では逆で、きれいにしていくとほどくようにいわれます。髪型について、小学校の先生たちに、ガンビアの文化でありアフリカの文化であると説明し、自分たちのアイデンティティに大きく係わることであると説得して校則で認めてもらうようにしたこと、日本人のお母さんたちにも理解してもらえるよう話したことなどが語られました。  ほかにも、講演ではガンビアのファッションや音楽・楽器、食べものや果物の紹介など、楽しい話題が盛りだくさんでした。異文化に触れ、受講者からも楽しげな感嘆の声や笑顔が見られました。印象的だったのは、ジャロウさんの飾り気のない語り口調。言葉の端々から、大らかで優しい人柄が伝わってくるようで、会場は和やかな空気に包まれていました。  名誉総領事として、オリンピックの支援やホストシティとなった守口市との交渉、外務省との仕事や日本からガンビアへ行く場合の業務にも触れ、日本の大使館がガンビアにはまだないことや(現在は隣国のセネガル大使館が兼轄)、日本にもガンビア大使館を作ってもらえるよう話を進めていることを紹介していただきました。  質疑応答では、会場からいくつも手が挙がり、ガンビアへの興味や実際に行ってみたいという声が上がりました。ジャロウさんは、「『Jollof Kitchen』の2階の名古屋市ガンビア名誉領事館で私がビザを発行しますから、ぜひ来て下さい」と笑顔で答えました。  講演の受講は無料で行われましたが、会場では名誉総領事館の活動支援金の募金が行われ、受講者の皆様からたくさんのご支援を頂くことができました。最後に田中部長から募金箱が手渡され公開講座は終了となりました。和やかな雰囲気の中、ガンビアへの親しみが広がった90分でした。  尚、皆様からご支援をいただいた名誉総領事館活動支援募金は総額26,038円となります。ご支援をいただいた皆様方には厚く御礼を申し上げます。

2022.10.23

本学OB、特別客員教授 映像作家OSRIN氏による特別講義を開催

本学OB、特別客員教授 映像作家OSRIN氏による特別講義を開催  2022年10月5日、西キャンパス B棟大講義室にて、本学 デザインマネジメントコース(現・ライフスタイルデザインコース)のOBで、今年度後期からの特別客員教授に着任した河内雄倫(OSRIN)氏をお招きし、特別講義を行いました。  OSRIN氏は、再生回数4億回を上回るKing Gnu「白日」のMVをはじめKing GnuのほとんどのMVを手がけ、King Gnuの常田大希さん率いるクリエイティブ集団「PERIMETRON(ペリメトロン)」の一員として活動。現在では映像作家、グラフィックデザイナーとして、millennium parade、Mr.Children、GLAY、櫻坂46など数々のアーティストのミュージックビデオやアートワーク作品を手がけています。学生からの注目度も高く、ライフスタイルデザインコース、映像制作に大きく携わる先端メディアコースの学生はもちろん、東キャンパスから音楽領域の学生も大講義室に詰めかけました。  講義は「OSRINとギャランティー」ということで、映像制作にかかる制作費と作家のギャランティーはどうなっているのか、普段はなかなか知ることのできない現在の制作現場で取り交わされているお金についてのお話です。  OSRIN氏は、卒業後は半年間フリーターで映像制作活動を行い、秋に上京して映像制作会社に就職。3年間勤め、2016年にクリエイティブレーベル PERIMETRONを立ち上げ活動を開始します。PERIMETRONは「GIVE US MONEY WE ARE COOL」というスローガンを掲げ、お金と作品クオリティに重きを置いていることを窺わせます。  2016年から携わってきた仕事のリストを表示すると、学生にどれくらいの制作費とそのフィー(作業報酬)だったかを問いかけます。学生から、あれはいくらだったんですか? と手が上がると、その金額を赤裸々に明かします。もちろん、ここに記すことはできませんが、安い金額に学生からはどよめきが起こります。というのも、まだ実績のなかった2019年までは赤字になる仕事でも引き受け、実績を積み重ねることと自分たちの作りたいものを作っていたと説明します。  制作予算の説明として、もちろんクライアントによって変動あるかと思いますが、TOTAL BUDGET(制作総額予算)のうち、ざっと半分が広告(PR)に使われ、半分がPRODUCTION(制作)に使われます。PRODUCTIONのうち、日本の広告会社の場合コミッション制(制作費のうちの10~15%がギャランティーとなります)を取る場合が通常ですが、PERIMETRONではコミッション制を採用せず作品クオリティを上げるために予算を使い切り、ときには持ち出しがおきてもいとわないスタンスで制作を行ってきたといいます。日本の制作現場では、こうした方法でクオリティを担保する制作会社が存在せず異色の存在となりますが、制作費以上の映像を制作できるクリエイターとして認知されていったといいます。そして、現在では、GIVE US MONEY の言葉通り、しっかりとお金を取って高いクオリティの映像を制作することができるようになったと、自分たちのやってきたことを説明しました。  印象的なのは、OSRIN氏の人を魅了する語り口。シビアなお金の話を、現在の広告業家や制作の世界を学生にわかるように解説しつつ、ユーモアを交えながら聞かせます。学生からの質疑応答でも、年齢が近いこともあってか積極的に手が上がり、フランクな質問が飛び交いました。卒業後、東京へ行って1ヶ月間ニートだったことや学生時代に遊びの経験が今の映像に生きていることなど、ざっくばらんな語り口が学生らの気持ちをつかんだようでした。  「夢もあるし、夢がないと感じるかもしれない。でもこの業界を変えていけるのは若い世代」と学生にエールを送りました。  OSRIN氏を学生時代から知るライフスタイルデザインコース 萩原周教授からは「ライフスタイルデザインコースを作って本当に良かったと感じています。こんなに学生からのレスポンスがいい特別講義も珍しいほど。本当に良かった」とねぎらいの言葉があり、特別講義は終了となりました。  この特別講義は、第2回として2022年12月を予定しています。映像制作の実践的な内容になるのか、非常に楽しみです。

2022.9.21

【工芸から】グリーンシティプロジェクト 室内展示、講評会を開催

【工芸から】グリーンシティプロジェクト 室内展示、講評会を開催  「グリーンシティ」は、本学がゲストや教職員のために用意している宿泊施設。東キャンパスと西キャンパスの中間地点、徳重・名古屋芸大駅近くにあるマンションで、その一室となる4LDKの部屋です。建物は1974年に建築と、少々、年季の入ったもの。簡素で味気のない部屋にアートとデザインの視点を取り入れ快適に過ごすことのできる空間にしようというのがこのプロジェクトです。工芸分野(美術領域 工芸コース(陶芸・ガラス)、デザイン領域 テキスタイルデザインコース、メタル&ジュエリーデザインコース)の学生が中心となり、部屋のあらゆる場所に作品を設置、展示します。今年の公開日は、2022年9月14日(水)~16日(金)の3日間。今回で3年目となるこのプロジェクトでは、これまでに作られたカーテンやクッション、アメニティボックスなどの作品が昨年の展示からそのまま部屋で活用され、それらとあわせて今年の作品が展示されることとなりました。  プロジェクトには美術領域から9名、デザイン領域からは6名の学生が参加。食器やカーテンといった生活に欠かせないものから、見て楽しく心を和ませるような作品、一室全体を展示場所に見立てたインスタレーション作品などが展示されました。初めて陶芸に挑戦した学生もおり、初々しい作品も並びました。  作品のほか、メタル&ジュエリーデザインコースは「美とは」というテーマで、何かを作って置くだけが美ではなく、取ったり片付けたりする事で場が美しくなる事を身体を通して理解するため、作品の搬入前に部屋を清掃し、金属技法の「研磨」という技術で玄関ドア、キッチン、ベランダ、リビングドアなどを磨き上げました。以前から綺麗だったように見え気がつく人はいませんが、空間が俄然変わったのは、掃除をした本人がわかります。外部展示の第一歩、場をまず美しく整えることは地味だが重要だと学びました。  初日の14日には、メタル&ジュエリーデザインコース 米山和子 教授、工芸コース 中田ナオト 准教授、テキスタイルデザインコース 貝塚惇観 講師、工芸コース 田中哲也 非常勤講師により講評会が行われました。学生がそれぞれ作品について簡単にプレゼンテーションを行い、意見を交わしました。  講評でテーマになったことの一つが展示の方法について。考え方としては、もともとの部屋の壁や部屋にあるものを利用して展示する方法、そうしたものと切り離して自分の作品の世界をしっかりと構築して見せる方法の2種類があります。実際の生活空間に作品を置くことの難しさについて考えさせられました。本来なら壁に掛けて飾ることを想定して作られていたものの壁に釘が打てず床に置いた作品や、作品空間の中に前回から置かれている他の作品が入り込んだり日常の家具が入り込むことで意味合いが変わってしまうものもあり、展示の難しさを感じます。壁への展示では釘が打てなくてもワイヤーで吊す方法があることや、家具が作品とそぐわない場合もテーブルクロスなどを用意することでより良く見せることができるなど講師陣からアドバイスがあり、実際に展示をすることで多くの学びがありました。美術館で展示する場合でも臨機応変に対応する必要があるなど、講師それぞれの経験に基づくアドバイスはなかなか聞く機会のないもので学生にとって意義のあるものになったと思われます。  また、食器や花瓶、鉢などの展示では、作品と雑貨、作品と実用など、美術と実用の道具との狭間にある「工芸」について、改めて考える機会にもなり非常に興味深い講評会となりました。今年の作品の一部もそのまま部屋で使われることになり部屋を彩ることになりますが、来年度は他の作品とのバランスも考えて作品を作る必要も出てきそうに感じます。日常の場と作品との関係性、また自分の作品と他の作品をどう考えるか、さまざまな要素について考えさせられる展示となりました。  中田准教授は、「もともとこのプロジェクトは、5年は続けたいと考えて始めました。何もなかった頃を思えば、芸大の宿泊施設らしくなってきたと思います」と語りました。今後、この部屋がどんなふうになっていくのか、楽しみになる展示となりました。 作品 講評会