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2022.12.23

特別客員教授 宮川彬良氏による、ウインドアカデミーコース 公開リハーサルを開催

特別客員教授 宮川彬良氏による、ウインドアカデミーコース 公開リハーサルを開催 ダイジェスト版  2022年12月15日、東キャンパス3号館ホールにて、ウインドアカデミーコース・弦管打コース 特別客員教授 宮川彬良氏をお迎えして、公開リハーサルを行いました。宮川氏は、大阪フィル・ポップス・コンサートの音楽監督・常任指揮者をはじめOsaka Shion Wind Orchestraの音楽監督、また、NHK Eテレ「クインテット」、BS「宮川彬良のショータイム」などのTVやメディアなどへの出演、「マツケンサンバⅡ」や「第68回紅白歌合戦」のオープニングテーマを作曲するなど、さまざまな音楽シーンで活躍する作曲家・舞台音楽家でありエンターテイナー。あらかじめ課題曲として練習してきた2曲を演奏、公開の場で作曲者自身の指導で演奏がさらに高まり、仕上がっていく過程を披露しました。  曲目は、おなじみの「マツケンサンバⅡ」と、2021年度全日本吹奏楽コンクール課題曲でもある「僕らのインベンション」、もちろんどちらも宮川氏の作曲です。まずは、演奏の実力を把握したいと学生の指揮で演奏を聞きます。2曲を演奏し、まずはマツケンサンバⅡから指導が始まりました。指揮する学生からは、リズムの一定に保つこととシンコペーションに気を配ったとの発言がありました。しかしながら、打楽器の安定感がもうひとつ、リズム隊に余裕がなくいっぱいいっぱいになっていると宮川氏は指摘。指揮とドラム、ベースだけで演奏を行い、そこに打楽器を加え、リズムを確認していきます。聞いている他のバンドメンバーがリズムを取っていないことにも着目し、お客さんは何を聞きに来ているかが問題であり、この曲では鑑賞するだけでなく心の中で踊っている曲と説明。ビートに乗って安心して音楽を聴いており、踊らせる演奏が必要であるといいます。リズムを安定させ、宮川氏が全身を使って指揮を行うと、演奏はビート感のある楽しいものに様変わりしました。リズムと同時に、オーケストラのように大きな編成でもバンドであることに変わりなく、音楽を作っていくことにはメンバー、一人ひとりの気持ちやリズムへの乗り方が重要であることに改めて気付かされます。演奏が温まってきたところで塚本伸彦 准教授とソプラノ歌手の加藤恵利子さんがステージに加わり熱唱、会場を大いに沸かせました。  2曲目の「僕らのインベンション」でも同じようにまずは学生が指揮し、それをもとに手直ししていきます。指揮する学生は、譜面どおりに演奏するように気を配ったといいます。宮川氏は、あえて大きく抑揚を付けて指揮し、しっかりしたベースがあるからできることと、さらに楽曲の楽しさを引き出すため曲の背景を説明をします。インベンション(発明)は、音を発明してしている曲であり、主音と導音の関係性を示しメロディーを追いかけていく旋律が交互に交わり続ける曲であると解説。2つの旋律が重なりあう部分が曲の面白みで、パートによってはフルートとクラリネットが掛け合いを行い、旋律が常に重なり合う音楽理論を構築した音楽の基礎を讃えている曲と説明します。その上で、ここでは大きな帆船が入港してくるイメージであるとか、一軒一軒玄関のドアを開けているイメージ、というようにパートごとに絵本を開くような視覚的なイメージを伝えてくれます。「譜面に書けるのは考えていることの60%ほど」と説明しますが、作曲者から曲の背景について学ぶことのできる非常に貴重な機会となりました。楽曲について研究することの意味の大切さを感じさせました。  当初、質疑応答の時間を設ける予定でしたが、濃い内容にあっという間に時間は過ぎ、公開リハーサルは終了となりました。2曲の演奏でしたが、音楽への興味が一層わき起こる有意義なリハーサルとなりました。 公開リハーサルの全編はこちらからご覧いただけます

2022.10.24

秋季生涯学習大学公開特別講座 「ガンビア料理店の名物おかみはガンビア名誉総領事!?」を開催

秋季生涯学習大学公開特別講座 「ガンビア料理店の名物おかみはガンビア名誉総領事!?」を開催  生涯学習センターでは、本学にもほど近い名鉄中小田井駅、駅前にあるガンビア料理店「Jollof Kitchen(ジョロフキッチン)」のおかみさんでありながらガンビア共和国名誉総領事も務めるビントゥ・クジャビ・ジャロウさんをお招きし、「ガンビア料理店の名物おかみはガンビア名誉総領事!?」と題し、異文化国際交流講演会を開催しました。当日、2022年10月15日(土)には東キャンパス1号館701教室へ多くの方にご来場いただきました。学生と留学生に加え、生涯学習講座とあって幅広い年齢の受講者にも参加いただき、普段の講義とはまた異なった、演目通りの多様性に満ちた会場となりました。  講演に先立ち、地域・社会連携部 田中部長から、ジャロウさんとガンビアについて紹介がありました。ガンビアは、年齢が50代以上の方なら記憶にある1977年制作のTVドラマ「ルーツ」の主人公クンタ・キンテが生まれた国。ドラマのヒットを受け実際に奴隷貿易の拠点となった島がクンタ・キンテ島と改名されユネスコの世界遺産に登録されているといいます。講演は英語と日本語を織り交ぜて行われ、同時通訳を国際交流センター長 松崎久美 准教授が務めました。紹介を受けていよいよジャロウさんが登壇、ジャロウさんは、エメラルドグリーンが美しいカラフルなプリント生地を使ったガンビアの民族衣装を身にまとい、会場は一層華やかな雰囲気になりました。  講演は、生い立ちと家族について、日本に来た理由と数年間の経験、夢とガンビア総領事館についての3つをお話しいただきました。  ガンビア共和国は、西アフリカに位置するガンビア川流域、セネガルに囲まれた小さな国。面積は11,300平方キロメートル、人口241万人というので、面積は岐阜県ほど、人口は名古屋市ほどとなります。西アフリカの国々の多くはフランスの植民地でしたが、ガンビアはその中にあってイギリスの植民地であったため公用語として現在も英語が使われています。1965年にイギリスから独立、英語が使えること、またTVドラマの影響もあって、現在はヨーロッパからの観光地として人気が高まっているといいます。ガンビア川の上流では稲作やとうもろこし、ピーナッツが栽培され、大西洋に近いところでは漁業が盛んとのこと。魚と米を食べることで日本とも共通する食文化があります(ジャロウさんは大のお寿司好き、旦那さんは焼き魚がお好きだそうです)。  ジャロウさんは、7人兄弟の長女として生まれ14歳のときに母を亡くし、妹、弟の面倒を見ながら高校へ通ったといいます。24歳でエンジニアであるご主人と出会い結婚、ご主人の勉強のため名古屋へ引っ越します。最初、日本では黒人である自分は奇異に見られ、非常につらかったといいます。「日本人はどう接していいのかわからなかっただけかもしれませんが、自分にとって暗い時期」でしばらくイギリスにいる兄弟のところに身を置いたこともあったそうです。再び日本に戻り生活を続けるうち、知り合いや支えてくれる人が増え、日本に馴染んでいったとのことです。  二人の子どもを生み日本で育てるなか、日本の文化との衝突もあったといいます。ガンビアでは学校へ行くにも髪の毛を結って身だしなみを整えることが大事なことなのですが、日本の小学校では逆で、きれいにしていくとほどくようにいわれます。髪型について、小学校の先生たちに、ガンビアの文化でありアフリカの文化であると説明し、自分たちのアイデンティティに大きく係わることであると説得して校則で認めてもらうようにしたこと、日本人のお母さんたちにも理解してもらえるよう話したことなどが語られました。  ほかにも、講演ではガンビアのファッションや音楽・楽器、食べものや果物の紹介など、楽しい話題が盛りだくさんでした。異文化に触れ、受講者からも楽しげな感嘆の声や笑顔が見られました。印象的だったのは、ジャロウさんの飾り気のない語り口調。言葉の端々から、大らかで優しい人柄が伝わってくるようで、会場は和やかな空気に包まれていました。  名誉総領事として、オリンピックの支援やホストシティとなった守口市との交渉、外務省との仕事や日本からガンビアへ行く場合の業務にも触れ、日本の大使館がガンビアにはまだないことや(現在は隣国のセネガル大使館が兼轄)、日本にもガンビア大使館を作ってもらえるよう話を進めていることを紹介していただきました。  質疑応答では、会場からいくつも手が挙がり、ガンビアへの興味や実際に行ってみたいという声が上がりました。ジャロウさんは、「『Jollof Kitchen』の2階の名古屋市ガンビア名誉領事館で私がビザを発行しますから、ぜひ来て下さい」と笑顔で答えました。  講演の受講は無料で行われましたが、会場では名誉総領事館の活動支援金の募金が行われ、受講者の皆様からたくさんのご支援を頂くことができました。最後に田中部長から募金箱が手渡され公開講座は終了となりました。和やかな雰囲気の中、ガンビアへの親しみが広がった90分でした。  尚、皆様からご支援をいただいた名誉総領事館活動支援募金は総額26,038円となります。ご支援をいただいた皆様方には厚く御礼を申し上げます。

2022.8.3

2022年度オープンキャンパス 声優アクティングコース特別客員教授 島本須美氏 特別公開講座を開催

2022年度オープンキャンパス 声優アクティングコース特別公開講座を開催  2022年7月23日(土)に、声優アクティングコース特別客員教授 島本須美氏の特別公開講座を行いました。  島本氏は、「風の谷のナウシカ」の主人公ナウシカ役をはじめ、「それいけ!アンパンマン」のしょくぱんまん役、映画「スターウォーズ」テレビ放送のレイア姫役など、誰もが知る数々の名作に出演、現在も第一線で活躍する声優です。  公開講座では、イソップ童話の「ライオンとネズミ」を題材に朗読と演技についての講義を行いました。会場から希望者を募り、2人組で掛け合いの台本を読みあげその場で修正して繰り返す、まさに実践的な声優レッスンを行いました。個々それぞれ読み方や発音のクセを一聴で見抜き、スピードや強弱をコントロールしてクセを取り除いて行きます。さらに、小さい子に聞かせるように赤ちゃんを抱いているつもりで、などと情感を表現に加えることでみるみる朗読が聞きやすく変わっていきます。少しの技術的な注意と適切な感情表現を盛り込むことで、わずか1組15分ほどですが参加者の朗読は見違えるほど上達しました。こうしたレッスンを何組も行うと個人特有のクセや練習方などそれぞれにあることがよく分かり、声優の仕事の背景にある技術と演技の一端を見せていただいたように感じました。  果敢にも壇上に上がり参加してくれた高校生たちに感謝するとともに、とても素晴らしい体験になったのではないかと思われました。 オープンキャンパス2022(7月開催分)

2022.7.22

ポップス・ロック&パフォーマンスコース ケイコ・リーによるボーカル特別公開講座を実施

ポップス・ロック&パフォーマンスコース ケイコ・リーによるボーカル特別公開講座を実施  2022年7月14日、東キャンパス2号館 大アンサンブル室にて、特別客員教授 Keiko Lee(ケイコ・リー)先生による、特別公開講座を行いました。今回の講座では、ポップス・ロック&パフォーマンスコース、音楽総合コースでボーカリストを目指す、2年生 田代桃子さん、3年生 若菜未沙さん、4年生 松本佳恵さんの3人が、ケイコ・リー先生にレッスンを受ける内容です。演奏に、ギター 渡邉規夫 教授、ピアノには名古屋音楽大学ジャズ科OBでジャズピアニストとして活躍する平手裕紀さんを迎え、本番ライブさながらに行われました。一般の方も聴講できる公開講座とあって、学生にとってはレッスンといえどもライブのステージに立つような貴重な経験となりました。  3名の学生はそれぞれ1曲ずつ歌を披露、その後、気になる部分をアドバイス、修正していく流れです。  最初は2年生の田代桃子さん、キャロル・キングの「It's Too Late」を歌います。田代さんは、以前からゴスペルも歌っているとのことですが、ゴスペルからイメージするよりもずっと澄んだ声が魅力的です。レッスンでは、カウントの取り方からリズム感について指摘。3人共に共通することですが、音符と音符のつながりをしっかりと認識しておらず、もっと連続して捉えることでリズム感が生まれ、それがグルーブを作っていくと説明します。テンポをゆっくりにして、音符とリズムを意識しながら丁寧に歌うとたしかに違いを感じます。リズムができてきたところでアーティキュレーションとして、声の強弱やアクセントを入れ表情を付けて行きます。“コブシ”として入れるブルーノートの場所などを修正しました。15分ほどのレッスンですが、ずっと叙情的に歌唱が変化しました。  続いて、4年生の松本佳恵さんが、アリシア・キーズの2003年のヒット曲「If I ain't got you」を披露。難しい曲をしっとりと歌い上げました。レッスンでは、やはりリズムの取り方を中心に指導。テンポを落として音符のつながりを意識して練習し、テンポを戻して歌います。英語の発音でどうしても早口になってしまうパートなど、テンポを意識することでスムーズに流れるようになりました。  3人目はの3年の若菜未沙さんは、グローヴァー・ワシントン Jr.、ビル・ウィザースの「Just the Two of Us」を披露。一度ビブラートを取ってそのまま歌わせ、のどを開く練習をします。キーを下げてテンポを落とし、低く太い声を出すようにして何度も歌います。かなり苦しそうな歌声でしたが、そのようにして重い声を出す練習も必要といいます。キーを元に戻すと、ゆったりと歌えるようになり、歌声もエモーショナルなものへとなりました。  ケイコ・リー氏からは「短い時間でも大きく変化し素晴らしく成長したように感じます、ひとつのことを憶え、身体に入って自然にできるようになるまで毎日やっても半年や1年はかかるもの。でも、その積み重ねが大事で、自分も日々練習しています。がんばって練習して下さい」と学生らにエールを送りました。  講義の最後に、平手裕紀さんのピアノとのデュオでセロニアス・モンクの「'Round Midnight」を披露。深く重い声の響きはさすがで、会場もうっとりと聴き惚れます。もう一曲、前向きな明るい曲をということで1965年のミュージカルの楽曲でスタンダードとなっている「On A Clear Day(You Can See Forever)」を歌い、特別公開講座は終了となりました。レッスンを受けた学生も、聴講に訪れた方々も音楽を楽しみ、大いに満足した公開講座となりました。 特別公開講座 全編(学内閲覧限定) ギター 渡邉規夫教授 ピアノ 平手裕紀さん ケイコ・リー 特別客員教授 2年生 田代桃子さん レッスン風景 4年生 松本佳恵さん レッスン風景 3年生 若菜未沙さん レッスン風景 ケイコ・リー氏 ライブ

2020.1.10

ワールドミュージック・カルチャーコース開設記念特別公開講座 岡野弘幹氏による「ワールドミュージックから見る平和な世界」を開催

ワールドミュージック・カルチャーコース開設記念特別公開講座 岡野弘幹氏による「ワールドミュージックから見る平和な世界」を開催 2019年12月5日、東キャンパス2号館 大アンサンブル室にて、岡野弘幹氏による特別公開講座「ワールドミュージックから見る平和な世界」を開催しました。この講座は、来年度新設されるワールドミュージック・カルチャーコースの開設を記念して行うもので、先月に続き2回目の講座となります。前回の講座では、現代のワールドミュージックの潮流についてお話しいただきました。今回は、岡野氏がさまざまな民族楽器に係わる中で知ることになった、その楽器の背景にある文化や社会問題などについてお話しいただきました。 前半は、岡野氏がこれまで世界の各地で行った演奏の動画を見ながら解説するという形式で行われました。ネイティブアメリカンのフルート奏者 カルロス・ナカイとの共演、NY、911グラウンド・ゼロでの平和式典で演奏、タリバン政権が倒れてからのアフガニスタン、世界遺産でもあるネパール ボダナート寺院での演奏など、これまで岡野氏が参加したイベントの演奏の映像を見ながら、楽器とイベントの背景について解説していただきました。岡野氏は、民族楽器に係わることにより、そこにある社会問題や文化背景のようなものに係わらざるを得なくなったと語り、民族楽器で奏でられる音楽と歌は、祈りの歌であるといいます。音楽の背景としては、例えばイギリスのパンクロックには、上流、中流階級と労働者階級との格差に異を唱える目的が背景にあり、同じように民族楽器と歌にはそうした社会背景があるといいます。 ネイティブアメリカンのナバホ族、ホピ族には、強制的に土地を追われた強制移住問題があること、ネパールではヒマラヤに多くのプラスティックゴミが廃棄されておりそれが大きな問題になっていること、タリバン政権下で芸術も音楽も禁止され地下壕に楽器を隠していたカブールの人々のこと、解放された後3万人ものストリートチルドレンがカブールにあふれ彼らに楽器を贈り一緒に演奏したことなど、そこで演奏される音楽と人々との結びつきの深さを感じたといいます。そこで、音楽が持つ力の大きさを実感するとともに、演奏を聴く人々からも大きなエネルギーをもらったと語りました。音楽を創る、音楽を演奏することが、自分自身の心の平穏につながっていき、また、そのことが音楽を聴く人にも伝わっていく、そうした意識を誰もが持つようになれば、少しずつだが世の中は変わっていくと感じている。音楽に係わるならばそんな意識も持って欲しいと、学生らに説明しました。 講義の後半は、民族楽器を使ったライブパフォーマンスです。ネイティブアメリカンフルートの演奏から始まりました。前回は、フルートをはじめとする北米ネイティブアメリカンの楽器中心でしたが、今回は世界各地、さまざまな地域の楽器をお持ちいただきました。フルートに続き、ネパールのシンギングボールが演奏されました。スティックで叩くほか、ボールの縁を滑らせるようにこするだけで綺麗な響きが生まれます。口に共鳴させて響きを調整しビブラートをかけるようなこともできます。続いて、モンゴルのゲンゴンという竹製の口琴。口にくわえ弾いて音を出すシンプルな楽器で、ビヨーンという愉快な音を奏でます。呼び名はいろいろですが世界中に似たものがあるそうです。続き、ステージで異彩を放っていた壺の登場。アフリカに古くから伝わる楽器でウドゥと呼ばれます。ウドゥはナイジェリア語で陶器の意味で、文字通り、陶器でできた壺です。穴を叩いたときの低音と、側面を弾いたときの硬い高音が心地良い響きです。ここで学生がコンガで参加、ウドゥとコンガのセッションとなり、会場は大いに盛り上がりました。アメリカで黒人に教わった基本的なリズムの取り方を会場に伝授し、カリンバとシェーカーでさらに会場を盛り上げました。続いては、雅楽器の笙の原型となったケーンという竹製の笛。構造としてはパイプオルガンと同じで、やはりケーンがパイプオルガンの原型といえるものだそうです。ギリシャのブズーキという弦楽器もあります。吟遊詩人が使う楽器で、哀愁を帯びた音色も激しい音も出せる楽器です。続いて、ひょうたんを使った中国のフルスという笛。3本の管が付いていて、ハーモニーが吹けるようになっているのが特徴です。最後は、手製の太鼓でネイティブアメリカンの曲を、会場の皆で歌いました。会場から、自作の太鼓を持ち寄った参加者も加わり、会場全体が叫び声を上げ大いに盛り上がりました。 講義の終了後も、参加した人々が岡野氏に楽器について質問したり、実際に楽器を手にしてみたり、ライブの余韻に浸りながらもいつまでも去りがたい雰囲気でした。岡野氏は、あらためて、来年度、若い学生たちとなにが始まっていくか、非常に楽しみにしていると話しました。 モネイティブアメリカンのフルート演奏 モンゴルのの楽器、ゲンゴンの演奏 アフリカの楽器、ウドゥの演奏 学生とのウドゥとコンガのセッション ネパールの楽器、シンギングボールの演奏 雅楽器の笙の原型、ケーンの演奏 中国の楽器、フルスの演奏 参加者が持ち寄った自作の太鼓も加わり、熱いセッションとなりました ギリシャの楽器、ブズーキの演奏 講義の終了後。岡野氏への質問や、実際に楽器の触れることのできる時間となりました

2019.11.22

ワールドミュージック・カルチャーコース開設記念 特別公開講座 岡野弘幹氏による「民族音楽が秘める可能性と未来」を開催

ワールドミュージック・カルチャーコース開設記念 特別公開講座 岡野弘幹氏による「民族音楽が秘める可能性と未来」を開催 2019年11月7日、東キャンパス2号館 大アンサンブル室にて、「民族音楽が秘める可能性と未来」と題し、岡野弘幹氏の特別公開講座を開催しました。この講座は、来年度新設されるワールドミュージック・カルチャーコースの開設を記念し、特別客員教授に就任予定の岡野幹弘氏に講座をお願いしたものです。 講座は2部構成で行われ、前半は岡野氏のキャリアを説明し、その過程で出会った様々な音楽やミュージシャンの動画を閲覧しながら現在のワールドミュージックがどのようなものであるかを説明する座学。後半は、ネイティブアメリカンが使用する楽器を中心としたライブで、岡野氏の演奏が披露されました。大アンサンブル室には、ポップス・ロック&パフォーマンス、音楽ケアデザイン、声優アクティング、サウンドメディア・コンポジション、リベラルアーツ等々、学生側も多彩なコースの学生が集まりました。 前半の講義は、岡野氏のキャリアの説明から始まりました。J-POPプロデューサーとして、Justy-Nastyや、いわゆるビジュアル系バンドに係わりプロデュースをしていたとのことで、とにかく現場に係わって音楽を作りたかったといいます。大阪のラジオ番組やTV制作にも携わっていたそうです。そうした中、あるバンドをイギリスからデビューさせるプロジェクトがあり、スタッフとともに音を作り込んで渡英したところ、イギリス側のプロデューサーから、物真似でしかなくオリジナリティのなさを指摘されたことにショックを受け、活動を一変させたことを説明します。それまで、売れることだけを考えて音楽制作をしていましたが、世界から見たときの日本を感じる音、日本人である自分が考える日本の音の追求が始まります。そこで、お経や自然音を含むファーストアルバムを自主制作し、欧米のレコード会社にサンプルを送付、ドイツからワールドワイドにリリースされることになり、音楽家としてのキャリアをスタートさせます。 活動する中、イギリスの音楽フェスティバル、グラストンベリー・フェスティバルに招待され、92年に参加。そこで、様々な国籍のミュージシャン、あらゆる民族楽器と出会い、新たな音楽活動が始まります。 そのころから、“ワールドミュージック”という言葉が使われるようになり、現代の音楽と民族音楽が混じり合い、新しい音楽が次々と生まれるようになったといいます。イスラエルのオフラ・ハザ、エジプトのウード奏者ハムザ・エル・ディン、 シター奏者ラヴィ・シャンカルなど、世界で活躍するワールドミュージックの演奏者を動画とともに紹介しました。 自身も様々な民族楽器に触れ、三味線、琴、ブズーキ、タイの木琴ラナート、カホンなど民族楽器だけで編成されたバンド、風の楽団Wind Travelin' Bandを結成、10年以上イギリス、アメリカをツアーします。ネイティブアメリカンのフルート奏者カルロス・ナカイと出会い、アルバムを制作。そこで、多くのネイティブアメリカンと出会い、音楽が祈りと結びつき生活や生き方と直結していることを体験し、新たな音楽の広がりを感じたといいます。さらに、新たなグルーブ感を求めて天空オーケストラを結成、ヨーロッパツアーに出かけたことなどを語りました。 ワールドミュージックを代表するレーベルとしてピーター・ガブリエルが創設した「Real World Records」を紹介し、ぜひ、聞いて欲しい説明します。世界では、ミックスカルチャーがどんどん進んでいて、自分に嘘のない、自分からわき上がってくるものを大切にして、ひとつひとつの音を大事に聞くこと、大事に人と出会っていくこと、こうしたつながりが新しいものを創ってくことを体験して欲しいと、まとめました。 後半は、民族楽器を使ったライブパフォーマンスです。様々な大きさのネイティブアメリカンフルート、鹿革を使って自作したやはりネイティブアメリカンの太鼓、鷲の骨でできた笛、ドクロをかたどったデスフルート、マヤ族のピラミッドから出土した鳥の笛の複製したものなど、多くの楽器を紹介していただきました。それぞれのエピソードと独特の音色は、まるで心に直接響くような独自の味わいがあり、大変、興味深いものでした。今回はネイティブアメリカンの楽器が中心となったため、やはりネイティブアメリカンから教えられた曲を中心に披露していただきましたが、岡野氏の歌も演奏も素晴らしく、曲が始まった瞬間会場の空気が変わり、神秘的であり幻想的でもある独特の雰囲気に包まれ、会場は大いに魅了されました。 岡野氏は学生たちに、オリジナリティとはどんなことだと思う?、と問いかけます。学生からは「誰かに影響されないで、自分の思ったものを創造する」「誰かに影響されたり、生活環境に影響された自分だと思う」「自分が創ること」などの声が上がりましたが、岡野氏はどれも正解で、何らかの影響を受けないと音楽はやっていない、影響を受けていろんな人と出会い、それぞれの環境で体験を経て、生まれてくる自分がある。体験は個人的なもので、同じように見えてもそれぞれ皆違う体験をしているもので、そうして生まれて来る何かがオリジナリティではないかと説明します。自分の身の回りの小さなことからやっていくことが大切ではないかと語りました。 3時間におよぶ講座は盛りだくさんで非常に充実したものになりました。次回、12月5日にも2回目の特別公開講座が予定されています。アフリカ、中東、アジア、中米など、より幅広い地域の民族楽器を披露していただく予定になっています。ぜひ、ご参加ください。

2017.12.21

サウンドメディア・コンポジションコース 入交英雄氏による公開講座「3Dオーディオの現状と未来」を開催しました

サウンドメディア・コンポジションコース 入交英雄氏による公開講座「3Dオーディオの現状と未来」を開催しました 11月23日(木)、本学東キャンパス2号館大アンサンブル室にて、芸術学部芸術学科 音楽領域サウンドメディア・コンポジションコース主催の公開講座「3Dオーディオの現状と未来」を開催しました。講師には、昨年度サウンドメディア・コンポジションコースで非常勤講師を務めていた株式会社WOWOW技術局シニアエキスパートの入交英雄氏をお迎えしました。 講義に先立ち、大アンサンブル室には、いくつものスピーカーが設置されました。客席を取り囲むように、スーパーウーハーを含めた7.1チャンネル、さらに2.5mほどの高さに4チャンネル、合計12個のスピーカーが設置されています。今回の機材は、株式会社ジェネリックジャパンより、また設置においては、東海地区の放送関係者の勉強会から中京テレビ放送株式会社の技術の方々にご協力いただきました。 講座は、長江和哉准教授による入交氏の紹介から始まりました。入交氏とは、2000年に、新潟で行われた、トーンマイスターによるの録音制作の勉強会で同じグループになったのがきっかけで、以降、親睦を深めていること。入交氏は日本に留まらず、世界でも有数の3Dオーディオ録音技術の研究者として知られ、大変素晴らしい技術を持っていること。さらに作曲も手がけ、TV番組やゲームの音楽を手がけていることなどが紹介されました。 入交氏が登壇すると、入交氏の活動と3Dオーディオについて紹介するビデオが流されました。平面的な5.1サラウンドに上方向を加えた3Dオーディオの仕組み、さらに入交氏が取り組んできた、3Dオーディオの録音方法について、簡単に説明されました。 そして、入交氏が実体験を踏まえて、ハイレゾや新たに登場している3Dオーディオのフォーマットについて説明しました。ハイレゾの定義は、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)規格では、44.1k24bitとされていますが、先月発表されたグラミー賞を主催する団体NARASでは、96k24bitが標準としており、今後、96k以上を基本に考えていくべきであると紹介。実際に音を聴き比べた場合、サンプリング周波数が96kと192kでは区別がつかないが、768kまで高めると聞き分けることができると紹介。その理由として、左右の耳では音の到達時間の差を細かく聞き分けることが可能で、その差はデジタル信号の500k相当になると説明。人間の耳で聞き取れる周波数帯域は20〜20,000Hzとされていますが、音の到達時間の差を敏感に感じ取っており、その部分でサンプリング周波数の違いを感じ取っているのではないかと説明しました。また、3Dオーディオのフォーマットとしては、NHK放送技術研究所が策定した「22.2マルチチャンネル音響」、「DOLBY ATMOS」、ベルギーで開発された「Auro-3D」、「DTS:X」などがあるが一長一短で今後どのフォーマットが主流になるのか不明で、制作側としてはどのフォーマットへも変換できる形で制作しておく必要があり、そこが問題であると説明しました。 さらに、スピーカーの数と聞き手の印象の変化について説明。具体的に、8個以上のスピーカーの数になると印象がかなり変化すること、また、2m間隔で配置すると結果が良いなど、実体験に基づいた説明をしていただきました。また、ヘッドフォン用の3Dオーディオのフォーマットについても説明しました。 説明の後は、入交氏がさまざまなホールや教会で録音してきた演奏の試聴となりました。それぞれの場所で、どのようにマイクをセットしたか図で示し、7.1+4chを2chステレオに切り替えたり、上部の4chを消した場合、歩いて試聴する場所を移動した場合の聞こえ方の違いなどを確認しました。 7.1+4chの音は、通常5.1chサラウンドを聞くよりも音の密度感が高く、響きの余韻なども聴き取れ、3Dオーディオの魅力を存分に体験することができました。 試聴の後、休憩をはさみ、3Dオーディオを再生する場合のセットについての説明を行いました。スピーカーの配置について、耳の高さのものを「ミドルレイヤー」、頭上を「ハイレイヤー」、さらに天井から真下に向けて設置するものを「オーバーヘッドレイヤー」、耳より下の位置にあるスーパーウーハーなどを「ボトムレイヤー」と定義し、先に説明した22.2、DOLBY ATMOS、Auro-3D、DTS:Xの定義をチェックして、流用することのできるスピーカー配置を紹介しました。 後半の試聴では、大台ヶ原や八ヶ岳の自然音、甲子園や花園ラグビー場の試合の音声などを試聴。やはりそれぞれのマイクの設置位置や録音方法を詳細に紹介しました。大台ヶ原の雨の音など非常に繊細で森の中にいる感覚が呼び起こされたり、スポーツの音では臨場感が素晴らしく、3Dオーディオの魅力と非常に有効な技術であることが理解できました。 質疑応答では、マイクのことや録音時のモニター環境、リバーブによる加工など、録音時のポイントについての質問がありました。録音方法については、決まったやり方がなく現在も模索し考えながらやっていること、また現在、本学にある機材を組み合わせ3Dオーディオの録音を実際に行うことができ、ぜひ、実践してみて欲しい、上部にマイクを増やすだけでも大きな違いを体験することができるはず、との言葉がありました。 学生からの感想では、小さなスタジオで聴くよりも空間を感じる、臨場感がすごくて実際に現場にいるよう、ライブビューイングやスポーツ観戦がすごく楽しめそう、などの声が聞かれました。 尚、本特別講義は公開講座として行い、多くのプロフェッショナル音響家の方に出席をいただきました。ご参加いただきありがとうございました。 機材協力 株式会社ジェネレックジャパン 長江和哉准教授の挨拶と入交氏の紹介から講座はスタート 入交英雄氏。今回の講座では、教会、ホール、大台ヶ原、甲子園球場などさまざまな場所で録音した音声を試聴 席を取り囲むように、耳の高さに8個、2.5mほどの高さに4個、合計12個のスピーカーを設置 ビデオや図を見ながら、3Dオーディオのフォーマットについて、実体験を加えて説明 試聴開始。ホールや教会など、それぞれの録音現場の状況と設置したマイクの種類と位置を詳細に説明 立ち上がって位置を移動した場合の音の変化なども確認。2chステレオとの聞きく比べや上部スピーカーをオフにした場合の変化など、さまざまなパターンを確認 後半は、再生装置のセットについて、フォーマットごとの違いなどを紹介 大台ヶ原、八ヶ岳、甲子園球場、花園ラグビー場など、自然音を中心に試聴 質疑応答。録音現場の状況や加工についての考え方など、制作上の疑問や注意点についての質問がありました

2017.11.29

テキスタイルデザインコース公開講座「シンポジウム テキスタイル産地のこれから ローカル&グローバル」を開催

テキスタイルデザインコース公開講座「シンポジウム テキスタイル産地のこれから ローカル&グローバル」を開催 2017年11月21日(火)、本学西キャンパスB棟大講義室にて、芸術学部芸術学科デザイン領域 テキスタイルデザインコース主催の公開講座「シンポジウム テキスタイル産地のこれから ローカル&グローバル」を開催しました。この公開講座は、共催に(公財)一宮地場産業ファッションデザインセンター、日本毛織物等工業組合連合会、尾州テキスタイル協会、後援に一宮市が付くもので、本学がこれまで取り組んできた地元テキスタイル産地との産学連携プロジェクトの一環として行われたものです。 日本のテキスタイル産地は、世界基準の高い技術力を持ち、欧州のファッションハイブランドに採用されるほどの高い評価を得ているにも関わらず、アジア諸国が生産する安価な製品に押され生産量が減少し、産業の衰退、後継者不足といった深刻な問題を抱えています。このような状況に対して、デザイン力を高めることで問題解決を図ろうとする試みが、若手のテキスタイルデザイナーから始まっています。今回の公開講座では、2017年度特別客員教授の斎藤統(さいとう おさむ)氏と2016年度特別客員教授の宮浦晋哉(みやうら しんや)氏、さらにテキスタイル産地で働く若手デザイナー、本学卒業生の小島日和(こじま ひより、terihaeru / canale2 / NINOW代表)氏、田畑知著(たばた ちあき、中外国島株式会社)氏、播州織産地出身でいち早く衰退する繊維産地ファッションとの距離に疑問を持ち活動を続けている小野圭耶(おの かや、東播染工株式会社)氏の3名を迎えて、テキスタイル産業のこれからについて考える内容です。 講座は2部構成で行われました。前半は、デザイン領域 扇千花教授を含む6名の登壇者一人ひとりがこれまで自身が関わってきた仕事や経歴、今現在行っている業務について、また、産地やテキスタイル産業について考えていることなどをプレゼンテーションしました。後半は、6名のパネリストによるパネルディスカッションとなります。また、会場には、テキスタイルデザインコースの学生によるテキスタイル開発プロジェクト「NUA textile lab」で制作された生地のサンプルが展示されました。会場には、学生に加え、お世話になっている尾州産地の企業の方、アパレル企業にお勤めの方、さらに百貨店など服飾品小売に関わる方など、多くの業界関係者にもお越しいただき、デザイナー、製造メーカー、小売業者など関係者が一堂に会する場となりました。 はじめに扇教授から、今回の登壇者の紹介があり、続いてプレゼンテーションが行われました。本学テキスタイルデザインコースの、羊毛をカットして毛糸を、綿花を育てて綿を収穫し木綿を制作する、素材制作から取り組んでいるカリキュラムを紹介し、さらに有松絞り、名古屋帽子、尾州産地といった地場繊維産業との産学連携事業、学生によるテキスタイル開発プロジェクト「NUA textile lab」の紹介など、テキスタイルコースの概要と取り組みを紹介しました。 続いてのプレゼンテーションは、宮浦晋哉氏が行いました。杉野服飾大学卒業後、渡英してLondon College of Fashionで学んだこと、さらにそこで日本製の生地が高く評価されていることを知り、そのことがきっかけで国内の産地に興味を持ったことなどが説明されました。プレゼンテーションの後半は、産地の現状を売上データなどから説明。現場に赴いたときの様子などを豊富な写真などと一緒に紹介していただきました。 続き、若手テキスタイルデザイナー3名が順にプレゼンテーションを行いました。最初は、本学卒業生の小島日和さんからです。学生時代に考えていたことから始まり、テキスタイルデザインコースを選んだ理由、さらに在学中に出会った有限会社カナーレの足立聖氏のこと、織物産地とアパレルの関係性の問題点など、現在につながるプロセスを紹介しました。 田畑知著さんも、本学テキスタイルデザインコースの卒業生。一度社会に出てから、再度大学で学ぶという経歴を説明し、学生時代に参加した、一宮地場産業ファッションデザインセンターが行うデザイナー育成事業「翔工房」について、経験したことや反省した点などを紹介しました。 小島さん、田畑さんよりも早くから織物産地との関わり合いを持つ小野圭耶さんは、高校時代、生まれ故郷である播州産地(兵庫県西脇市)の職人との出会いに始まり、下請け仕事が中心となっていることへの疑問と問題について説明。自身の活動について紹介していただきました。 続いて、再度、小島日和さんが登壇し、今度は、若手産地デザイナーによる合同展示会「NINOW(ニナウ)」について報告しました。本日、参加いただいた3名のデザイナーに加え、6名のデザイナーが10月26、27日に東京、代官山のクラブヒルサイドサロンで合同展を開催しましたが、発起人である小島さんが、実現までのプロセスや当日の様子、反省点などを報告しました。 プレゼンテーションの最後には、齋藤統氏が登壇し、若手の活動を評価し、海外と日本の市場や商習慣の違いを説明。日本には優れた技術があるもののソフト面が不足しているなど、問題を提起しました。また、オールジャパンで海外市場へ売り込む戦略など現在の活動に触れ、学生たちにも通訳を通さず説明できる語学力が重要だと説明しました。 休憩を挟み、後半はパネルディスカッションが行われました。 宮浦氏が進行役となり、NINOWの反響についてから始まりました。テキスタイルの世界では、企業名より先にデザイナー個人の名前が出ることはないので、デザイナーだけでなく製造の現場にとっても大きな刺激になったこと、その場で多くの問い合わせがあり、多くのスワッチ(織物の素材見本)を現在も送っている最中であることなどが語られました。反面、産地の現状ではアパレルデザイナーが求めている商品がどんなものなのか意識しないままデザインしており、今後、摺り合わせが必要、といった反省の言葉も聞かれました。 齋藤氏からは、NYの展示会ではその場で商談が成立することもあるなど、米国、欧州、日本の商習慣の違いについて話があり、日本独自の「消化仕入れ」(陳列する商品の所有権を卸業者やメーカーに残しておき、小売業者で売上が計上されたと同時に仕入れが計上されるという取引形態)について紹介し、そのことによる目利きとしての質の問題や在庫リスクの責任についてなど、知っておくべき商習慣についても説明がありました。また、近年では、インターネットによる生地の販売なども始まってきており、新しいことを受け入れていくことの重要性などについても語られました。 扇教授からは、日本はソフトの部分が不足しているとの話があったが、欧米に対してデザイナー個人の発想力は決して劣っているわけでなく、そうしたアイデアを生かすための土壌や仕組みが不足しているという発言がありました。 質疑応答では、百貨店にお勤めの方から、今後の動きとして洋服を購入する顧客に対してデザイナーや産地を前面に出していくための方法についての質問や、尾州の企業の方から、尾州の織物を高級品としてアピールすることを中心に考えているが、安価なものもたくさん製造しておりもっと幅の広い視野で見て欲しいなどといった意見が出されました。 4時間に及ぶ、長時間のシンポジウムとなりましたが、業界関係者、若手テキスタイルデザイナー、学生が交わり合う、非常に有意義なものとなりました。 前半は、パネリストが順に自分の経歴や仕事についてプレゼンテーション。扇教授は、パネリストの紹介とテキスタイルデザインコースについての説明 宮浦晋哉氏は留学先の英国で、日本の生地が高く評価されていることを知り、国内の産地に取り組むことになった経緯を紹介。現在の産地についても報告 小島日和さん。学生時代の話や、有限会社カナーレの足立聖氏との出会いについて説明 田畑知著さん。一旦社会に出て働くも、大学に入り直してテキスタイルに取り組むことになった経緯を紹介 小野圭耶さん。高校時代に播州織職人と出会い、産地企業に就職、自社ブランドを立ち上げる。同世代の職人と勉強会などを行い、「考える工場」という概念を提示 齋藤統氏。日本には優れた技術があるもののソフト面が不足していると問題を提起。語学力も重要と説明 会場には、「NUA textile lab」で学生がデザイン、尾州で制作された生地のサンプルを展示 休憩時間、講座終了後、サンプルを手にとって熱心に見入る方も

2017.11.22

大坂昌彦氏による公開講座「ジャズからポップスまで、ドラムスとアンサンブルの研究」を開催しました

大坂昌彦氏による公開講座「ジャズからポップスまで、ドラムスとアンサンブルの研究」を開催しました 11月9日(木)、東キャンパス2号館大アンサンブル室で、ドラマーの大坂昌彦氏をお迎えして公開講座「ジャズからポップスまで、ドラムスとアンサンブルの研究」を開催しました。 この公開講座は、本学芸術学部芸術学科音楽領域ポップス・ロック&パフォーマンスコースの主催によるもので、上田浩司教授がホストを務め、大坂氏による演奏、トーク、学生バンドのクリニックという流れで進められました。 講座に先立ち、上田教授から挨拶と大坂氏の紹介がありました。「日本を代表するドラマーですが、個人的には世界を代表する超一流ドラマーだと思います。スイングジャーナル誌の人気投票では、16年間の長きにわたりドラム部門の1位を獲得し続けてきた人気と実力を兼ね備えた存在です。本日は、ライブ、レコーディング、プロミュージシャンとして、ジャズのいろいろな現場のことについてを伺っていこうと思います」と紹介しました。 挨拶のあと、大坂氏がいよいよ登壇。ハイハットひとつだけを使う「ミスターハイハット」を演奏しました。ハイハットをさまざまな奏法で叩くことによってひとつの曲にしてしまう、曲というよりは名人芸といえるもの。確かなリズム感と鮮やかなテクニック、1音1音の粒立ち、音切れの良さ、息を飲む演奏でした。 続いて、上田教授とのトークとなりました。音楽は、その音楽が生まれる時代背景や流行などと密接な関係があり、歴史を学ぶことでより深く音楽を学ぶことができると話します。本学にルーディメンツクラブ(ルーディメンツはスネア・ドラムの基本奏法のひとつ)があることに喜び、部員である学生が飛び入り参加して演奏。ことにジャズの打楽器は、米国の南北戦争にルーツをたどることができると解説し、ルーディメンツの発達と歴史を交えて説明しました。 さらに、芸術大学でポピュラーミュージックやジャズを学ぶ意味として、音楽を広く知るということの意義を説明しました。プロの現場では、幅広いアイデアが求められ、音楽的に広い知識があればその場でアイデアを提供できる、現場のイニシアチブを取ることができるようになること。さらに、海外のプロデューサーやアレンジャーにはドラマーやベーシスト出身者が多く、その理由として自分を抑えて他者をプロデュースすることができると説明します。 また、レコーディングやステージの現場の話として、現在、日本国内には50名以上の外国人ミュージシャンが居住しており、英語でのコミュニケーションがとても重要になってきている。ことにホーンセクションのスタジオミュージシャンには米国人が多く、スタジオでは英語が共通語となっていること。今後、こうした傾向はさらに強まり、コミュニケーションツールとしての英語が必要になってくると説明しました。 さらに、特にドラマー、ボーカリストに望むこととして、音楽についてよく知ることを強く求めました。海外のボーカリストには譜面を読める人が少なく、音楽についてよく知ることで、仮歌の仕事やCMソングの仕事など、多くの仕事の機会が増えると話します。 音楽と英語の重要性、さらに音楽を深く知るために、歴史やさまざまな芸術、教養を学ぶことがとても重要であると、トークをまとめました。 トークのあとは、質疑応答です。はじめに大坂氏から学生らに、ポップスとジャズどちらでやっていきたいかと逆質問。ジャズという反応が多く、満足気な笑顔を見せました。「音楽業界は、以前にくらべ芳しいものではなくなったが、その分、好きだからやっているという人が増えた。どの分野でも同じだと思うが、純粋に好きでやっている、ということが増えている」と現状を話しました。 最後は、2組の学生バンドが演奏を行い、クリニックとなりました。それぞれのバンドで、具体的に曲の部分を指定して修正するなどしたほか、どちらのバンドにも、丁寧に演奏することの重要性を、また、バンドのサウンド全体を見渡し、バランスを考えること、バランス感覚を養ってサウンドデザインを考えることの重要性などを説明しました。 具体的な指導内容に加え、音楽全体の捉え方、プロの世界の話など、多くの示唆に富む非常に意義深い講座となりました。 上田浩司教授から挨拶と大坂昌彦氏の紹介 スティックを手に大坂昌彦氏登壇。ハイハットを前に、ハイハットという楽器の発展の歴史を説明 ハイハットのみをさまざまな奏法で叩く「ミスターハイハット」を演奏 ルーディメンツクラブの学生が飛び入り参加。腕前を披露 音楽を幅広く学ぶことの意義、多くの教養、英語を学ぶことの重要性を説明 質疑応答。作曲をやっている学生から、ドラマーはどう考えて曲にアプローチするかを質問。作曲も行う大坂氏は、ピアノで作曲するが、作っている途中でドラムを叩いてみると、新しいアイデアが閃き、曲のアレンジなどにつながると返答 クリニック、1組目のバンドの演奏。テンポを遅くして、もう一度丁寧に演奏するよう指示。演奏に加え、アレンジもメリハリを付けるよう多くのアドバイスを与える 2組目のバンド。当日、メンバーが揃わずベースのいない編成に。それならば、そのことを逆手にとって、もっと奇抜なアレンジでも良いのではと提案。同時に、バランス感覚がとても重要だとアドバイス

2017.10.1

人間発達学部主催 特別公開講座 今井和子氏「遊びが育む豊かな学びとことば」を開催しました

人間発達学部主催 特別公開講座 今井和子氏「遊びが育む豊かな学びとことば」を開催しました 9月23日(土)、ウィルあいち 愛知県女性総合センターにて、人間発達学部が主催する特別公開講座、今井和子氏による「遊びが育む豊かな学びとことば」を開催しました。会場には、人間発達学部の学生をはじめ、卒業生、幼稚園、保育園、子ども園などで保育の現場に携わる多くの皆さまにご来場いただきました。 公開講座は、久保博満准教授が進行役を務め、星野英五学部長の挨拶で始まりました。人間発達学部の歴史と教育理念を紹介し「本日の講座は、日頃、取り組んでいることを振り返るのに大きな意味を持つことになると思います。明日の保育と教育のお役に立てれば幸いです」と口上を述べました。 続き、豊田和子教授から、講師の今井和子氏の紹介がありました。今井氏の保育現場での経歴に加えの代表を務めていることを紹介し、「20数年間の保育現場での実践、さらに、20数年間の大学での教鞭と、実践と研究を長く手がけられてきました」と説明しました。 「子どもとことば研究会」(http://www.kotobaken.ecnet.jp/) 講座は、子どもたちに接するとき同じような、今井氏の爽やかでわかりやすい口調が印象的でした。核家族化、少子化、IT革命……、これらにより人間関係の在り方が変わり、子どもたちの生活に大きな影響を与えていること、とりわけ、親と子の人間関係が変わってきていると説明します。「国連から見た日本の子どもの権利状況」を引き、日常会話が少なくなっていることを憂い、レフ・ヴィゴツキーの「人間の思考は、幼児と両親の間で交わされる対話の相互作用の中から生まれる」という言葉を紹介し、会話の重要性を話しました。「子どもとことば研究会」により集められた子どもたちの言葉をいくつか紹介し、近年では、こうした子どもの心の動きを表現したような言葉を集めにくくなってきたように感じます、と説明します。さらに、日本の子どもの自己肯定感の低さを紹介し、それは豊かな遊びを経験していないことが大きな原因になっているのでは、と警鐘を鳴らします。夢中になって遊ぶことが自分らしさを育み、そして個性を発揮することができるようになり、そのことが自己肯定感を育てると説明します。実践の記録として「よっちゃんとコロコロうんち」のエピソードを紹介し、大人が子どもの興味に共感し、子どもが好きなことに熱中することで本来の自分を現し、意味を持った行為へと発展していくことになる、と説明します。 さらに、遊びが生きる力を養う理由として、“面白い”に夢中になることで集中力が養われ、興奮を持続させる遊びが大脳を活発化し、脳の前頭前野を発達させることにつながると説明します。脳の発達に伴い、行動を抑制する力も付き、自分をコントロールすることができる人間へと成長し、いわゆる、キレやすい子どもやいじめをする子どもではなくなると説明します。また、遊びの中では、自分の思い通りにならないこともあり、社会的経験やさまざまな感情を体験することになり、そのことがコミュニケーション力を養うことにもなると説明。安全保育の考え方について、子どもに怪我をさせないことを優先しすぎて、リスクに挑戦するという行為の芽を摘んでしまっていないか、と問います。遊びの中で、失敗や葛藤を繰り返すことで、それを乗り越える生きる力を養っていくと説明しました。こうしたことを、実践記録の映像を見せながら、「子どもの動きを線として見ることで、目に見えない心の動きを観ることができる。心の動きを観察することで、子どもの本当の願いを知ることができる」と話しました。 「指導計画の狙いは、子どもと保育者の願い」であり、保育者は仲立ちとして、発達の壁の代弁者となる仕事。そこで子どもとつながる信頼関係こそが、保育の仕事の醍醐味だと説明し、講義を締めくくりました。 講義後の質疑応答では、幼稚園の園長先生や保育所の先生から「安全保育の在り方について非常にいい学びになりました。親御さんに対してもしっかりと説明していきたい」と薫陶を受けたお礼の言葉や、「子どもを線として観るにはどう心がければ良いか」といった質問が出されました。それに対し今井氏は、「子どもがやっていることと同じ行動を取ってみること、子どもに寄り添ってみること」と回答しました。子どもの行動には必ず理由があり、行動の理由を探してみることが大切なことであり、「困った子ではなく、困っている子」として観て、子どもを肯定的に見ることで、見えて来ることがあると返答しました。 講義の終わりに、学生から花束が贈られ、客席からは大きな拍手が送られました。 「子どもとことば研究会」代表 今井和子氏 星野英五学部長の挨拶 子どもに話すときと同じような柔らかな口調 実践記録「ゴミ収集車のお兄さんに憧れた3歳児たち」 子どもの行動を線として捉えることで、かみつきや乱暴にも理由があることが理解できる 「しんちゃんの乱暴」 ブランコの鎖を外す4、5歳児」 安全保育の在り方を問う 熱心にメモを取る受講者たち 講義終了後、学生から花束を贈られる今井氏 人間発達学部の学生・卒業生、教育現場に携わる多くの方に来場いただきました