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2023.4.21

「第5回 名古屋芸術大学展 卒業・修了制作選抜」を開催

「第5回 名古屋芸術大学展 卒業・修了制作選抜」を開催  2023年4月18日(火)~23日(日)、「第5回 名古屋芸術大学展 卒業・修了制作選抜」作品展が愛知県美術館 8階ギャラリー H・I室 にて開催されました。2023年2月に本学キャンパスで開催された卒業・修了制作展において優秀な成績を収めた卒業生17名の作品を展示しました。同じ作品ではありますが異なった場所での展示となるため、それぞれに展示方法を考え直したり、わずかな期間の間に作品をさらにブラッシュアップさせるなど、展示に工夫が見られました。  展示を担当したArt & Design Center 山本真弥圭さんは、「今回は、これまで以上に展示や照明にもこだわりました。この会場でここまで照明を落としたのは初めてではないかと思います。学内での展示とは、またちがった作品の表情をご覧いただければと思います」といいます。取材日は平日でしたが、場所柄からか多くの方が会場を訪れていました。山本さんによれば、学内での展示と比べたり、どの作品がグランプリを獲るのか関心を寄せたり、一定のファンを獲得しているとのことです。  2023年4月19日には、キュレーター・グラフィックデザイナー 特別客員教授 堤拓也氏が会場を訪れ、作品審査を行いました。  「展示自体、とても良かったのではないかと思います。賞には選んでいませんがデザインの渡部航介さん『流動と偶然』は、いい仕事をしているなと思いましたし、陸小燕さんの『架空の惑星 ニビルの世界』は、アップデートがあって良い展示になったと思います。今回の展示ではデザインとアートが別室になっていますが、アートはスッキリとした展示、デザインはいろいろなものがごちゃっとあるイメージです。展示のことを考えるともっとミックスして全体で見せることができればもっと効果的な展示になったのでは、と感じました。総じていえば、アート作品として質の高い宇留野圭さん、中崎由梨さんら大学院生の作品があり、山本将吾さんもそこに加わり、一方でデザインでは高岡卓史さんの『irene project』のようなクオリティの作品があり、渡部航介さんやグラフィックに関する作品もあり、いろいろな作品があり今後が楽しみになりました。取り組み方に方向性がしっかりとある人が今後も続いてくれればいいなと感じています」とコメントしました。  グランプリは、高岡卓史さん「irene project」、準グランプリは新川未悠さん「山にふれる方法」、山本将吾さん「[ ]」、「smooth stone」、「∞」となりました。 ■選抜作品展出品者一覧 スペースデザインコース irene project グランプリ 高岡卓史 アートクリエイターコース(美術文化創造) 山にふれる方法 準グランプリ 新川未悠 洋画コース [  ] / smooth stone / ∞ 準グランプリ 山本将吾 日本画コース ここから 早瀬葵 日本画コース 深奥 中村安砂美 アートクリエイターコース(コミュニケーションアート) 生まれた椅子 金城琉斗 アートクリエイターコース(陶芸・ガラス) ひとときパレード 田村くるみ ヴィジュアルデザインコース 流動と偶然 渡部航介 ヴィジュアルデザインコース Music visualize ジョンソンミシェル イラストレーションコース mass attack 曽我部晴菜 メディアコミュニケーションデザインコース 架空の惑星 ニビルの世界 陸小燕 テキスタイルデザインコース スタースプリンクル・ドーナツの宇宙旅行(星観■ソク゜者ャ????の■■???????) 石井芳 メタル&ジュエリーデザインコース 言葉の情景 川中冴恵 ライフスタイルデザインコース ふれ在る一存在を確信するとき一 宮崎千穂 大学院 同時代表現研究 Seen from both sides 中崎由梨 大学院 同時代表現研究 「9の部屋」「12の部屋」 宇留野圭 大学院 ヴィジュアルテザイン研究 Visage —顔— 川浦真歩 すべての作品はこちらからご覧いただけます 受賞理由《堤拓也氏講評》 グランプリ irene project(アイリーン・プロジェクト) 高岡卓史  トロンボーン、バリトンサックス、コントラバス、ドラム、チューバ、テナーサックス、トランペットと、自身が立ち上げた楽団メンバーそれぞれの演奏形態に合わせた椅子を設計し、なおかつ、各楽器を置いておける展示台のようにも機能する本プロダクトの完成度を評価した。  自身もサックス演奏者である経験から生まれた、未来希望性(「こんなものがあったらいいのになあ」的な)と現実否定性(「こんな椅子がない現実がむしろおかしい」的な)をデザインによって達成しようとしたところは、アートやデザインといったジャンル関係なく賞賛に値する。  また実際、展示という枠組の中で製品をプレゼンテーションし、より多くの観客に周知しようとする本機会においても、たとえばiPadを用いて映像を提示したり、楽譜に見立てたキャプションがあったり、場合によってはその2点専用の什器すらも自らの設計であったりと、数多くの工夫と譲れない質への探究心が見られた。これまでなかった耐久性を持つ物質を世界に1点新規投入したという点で、意義深い仕事だと考えられる。 準グランプリ 山にふれる方法 新川未悠  リサーチベースのプロジェクトやインスタレーションが無数に存在している昨今のアートワールドにおいて、出身地である愛知県新城市で祖父と父が携わっている林業にフォーカスし、かつてその祖父が71年前に見た「太い杉の木」を一緒に見つけにいくというアートドキュメンテーションは、場合によっては見慣れた手法と言えるかもしれない。  手ブレが激しい映像だけではなく、歩んだ場所を示す地図や、発見した大木の部分的な1/1モデルを並列したようなインスタレーションは、正直なところ、美学的により洗練されるべきという意見もあるだろう。しかしながら、絵画や彫刻といったクラシカルな形式と同様、こういったものが卒業制作展の段階で——こういって良ければ非常に無垢的に出現しているという点で評価することは、いま大学で芸術を学んでいる後続世代にとって意味があると考えた。  仮にも絵画が強い地域性の中で、時代の要請やメディアの多様化を汲み取り、とはいえいずれ消えゆく祖父の経験や彼の生そのものを「芸術に便乗して」定着しようとした試みは実際、十分な見場を持つ作品でもあった。 準グランプリ [  ] / smooth stone / ∞ 山本将吾  3つのシリーズを空間内に展開した本展示自体の功績というよりもむしろ、これに先立ち実施された「名古屋芸術大学卒業制作展」(会場:名古屋芸術大学西キャンパス)からの作品および展示の更新性を評価した。  話はやや迂回するが、美術史的にミニマリズムが作品の自律性を放棄してしまった以上、極論、インスタレーションは異なる観客が訪れる度にすべてが新作とも言えるくらいその「状況全体」は変化し続ける。とはいえそれでは作品の外郭を定位できないがために、「いったん流動的な観客のことは忘れて、展示環境や空間くらいまでを作品の一部にしておきませんか?」という現実的な取り交わしがあると考えている。  それゆえに本作は、名古屋芸術大学でも、愛知県美術館でも同作品として措定可能であり、また別の会場でも同作品としてインストールされ得るが、その中でも人間の認識を扱う《 [  ] 》は今回、その意図性がために、前回に比べて大きな変更がなされている。かつて1対の大きな准矩形は、本展示では3枚の小さな矩形となって空間に収まっているのだ。そういった環境・状況に合わせて配置の技芸以上のスケールで変更してくる狙い深さは、着目に値する。

2023.4.12

卒業制作展記念講演会 OSRIN氏「どんぐりのせいくらべ」

卒業制作展記念講演会 OSRIN氏「どんぐりのせいくらべ」  卒業制作展 50回記念講演会の最後は、本学ライフスタイルデザインコース卒業生でもある映像作家OSRIN氏。2023年2月26日(日)に「どんぐりのせいくらべ」と題し、卒業してから現在に至るまでクリエイターとして感じてきたことや映像制作の実際についてなど、さまざまな事柄についてお話しいただきました。  2013年卒業のOSRIN氏は、学生にとって年齢も近く身近な存在でありながらも、King GnuのMVなど一連の仕事は憧れの存在でもあります。会場となった体育館には多くの受講者が集まりました。  講演では、自己紹介から始まり、若い頃の感情・経験、今の思考までさまざまな話をして頂けました。  OSRIN氏の大学在学中は、ホストクラブでアルバイトしながらライフスタイルデザインコースで課題をこなしていたという異色の経歴。映像を作る専攻でないものの映像制作会社へ就職、ADとして映像制作現場の雑務をこなしつつ自分がやりたい仕事ってなんだろうと考えた3年間だといいます。2016年にPERIMETRONの作品をリリース、そこからの6年間で200案件を超える作品を制作。  この10年間を振り返ると「映像を作るコースでもなかったのに映像でメシを喰っていけるのか、いろいろなことが不安だった。誰々はどこどこへ就職したとか、どこそこへインターンへ行ったとか、誰々の給料はどれぐらいとか、聞きたくもない話ばかり気にしてしまい、複雑な思いでいた」といいます。今回の講演では、そうした気持ちを寓話にし紙芝居にして説明していただきました。  背をくらべるどんぐりたちと、それを見下すようにあざ笑う北風、さらに北風さえも包み込むような山、3者の視点の違いともいうべきお話です。「北風ってじつは自分のことで、数年前まで自分がそんな感じだったと思う」といい、他者と自分を比較することに嫌気が差し、くらべるという行為自体を見下すようになってしまっていたといいます。「見下すということは、その人たちと自分をくらべていることになってしまっていて、矛盾していると思うようになり反省した。くらべることは、人のことを肯定的に見たり、客観的に自分を愛せたり、そうしたこともできる」と比較することをポジティブに捉えることで、この10年間やってこられたと説明します。否定せずしっかりと捉え直すことが切磋琢磨を生み、より良いものを生み出すことにつながっていくと説明し、これから社会へ出る学生たちに、不安があっても生き抜いていって欲しいとエールを送りました。  このほか、King Gnu 「カメレオン」のMVのコンセプトや絵コンテなど具体的な映像制作の実際も紹介、作品の裏側にある思いなども紹介していただきました。  質疑応答ではたくさんの質問が挙がり、アイデアが出ないときにはどうしていますか、という問いには「自由に作って良い場合などテーマが広すぎると考えにくい。誰に伝えたいかターゲットを絞ることでアイデアも絞り込まれ考えやすい。誰に喜んでもらうかを考えること」と回答。参加した高校生からの、どういう気持ちで芸大に入って、どういう気持ちで卒業したかを教えて、という質問には「高校時代、進学するつもりはあまりなかったけど、拾ってもらえて入学、目標もなく過ごしていた。ただ漠然と友達と一緒に働きたいという気持ちがあった。手に入れたカメラで親友の誕生日の映像を作り、それを見て飛び跳ねて喜んでくれて、自分も泣いて、みんなで泣いたことが映像制作の始まり。映像って強すぎると感じた。大きな目標もないままだったけど、誰かのために映像を作って、あんな気持ちをもっと味わいたいというのが動機になっていると思う」と映像制作に携わるようになったきっかけなども紹介していただきました。  「誰かのためになることをどう見せるか、映像でもグラフィックでも紙芝居でも同じで、アウトプットが異なるだけ。それにこだわってやってきたことがこの10年だった」とまとめ、講演は終了となりました。

2023.4.1

卒業制作展 50回記念講演会 千住博氏「学生の皆さんに伝えたいこと/創造の現場より」を開催

卒業制作展 50回記念講演会 千住博氏「学生の皆さんに伝えたいこと/創造の現場より」を開催 ※講演部分は音声のみとなります。  卒業制作展 50回記念講演会第1弾として、2023年2月7日(火)日本芸術院会員である画家 千住博さんをお迎えし「学生の皆さんに伝えたいこと/創造の現場より」という演目でお話しいただきました。千住氏は、1995年創立100周年のベネチア・ビエンナーレで東洋人初の名誉賞を受賞、以降イサム・ノグチ賞、恩賜賞、日本芸術院賞など数々の賞に輝きます。作品はメトロポリタン美術館、ブルックリン美術館、シカゴ美術館をはじめ、国内外の主要美術館、薬師寺、出雲大社などに収蔵され、高野山金剛峯寺、大徳寺聚光院の障壁画も担当するなど、現代を代表する日本画家であり、現代アート作家でもあります。  講演のテーマとして、「類型のない作品を生むにはどうしたらいいか?」「コンテンポラリーアートとは何か?」「伝統と革新はどういう関係か?」「世界で活躍するにはどうしたらいいか?」「どうやったら個性は磨けるか?」、とこれらの命題を掲げ自身の経験とたくさんの映像を織り交ぜながら、考えをお話しいただきました。  アートについて深く考えるようになった転機として、2013年に制作された大徳寺聚光院の襖絵「滝」を挙げ、聚光院には国宝である狩野永徳の花鳥図があり、その隣に自分の襖絵が並べられることになったことについて「永徳と比較されたら敵うわけがない。歴史的にも最高峰であり、勝負にならない。伝統的な美術の世界でこそ求められてるのはコンテンポラリーアートではないか。類型にとらわれず、比較されない形で自分を展開する気持ちで制作しよう。自分が美術史のどの流れにある作家であるかを自覚しつつ、前例にない仕事をやっていこう」という考えに至ったといいます。  この命題を前置きに、旧石器時代のショーヴェの洞窟壁画にはじまり、中世、西洋絵画の父と呼ばれるジョット、ルネサンスのボッティチェリとミケランジェロ、続きダビンチと同時代の狩野永徳、さらに尾形光琳、浮世絵の北斎と広重、洋画に戻り印象派、その延長として現代アートのはじまりであるデュシャン、その流れからウォーホル、ラウシェンバーグ、そしてダン・フレイヴィンやウォルター・デ・マリア、アンゼルム・キーファー、ゲルハルト・リヒターといった現代の作家までの作品と背景をかけ足で説明します。  通常、解説される美術史の説明に加え、同じ作家としての立場からの視点と背景の考察がユニークで、非常に興味深い内容です。  旧石器時代の壁画からは「観察と記録」という絵画の機能にはじまり、「時間と空間」を意識していたと指摘、中世の絵画からは見えないものを見えるようにし始めたこと、さらにルネサンスや狩野永徳、印象派からは時代背景に対して社会の希求を見いだします。こうしたなかから芸術の役割として「ないものを指摘し、あるべき世界を示す」ということを挙げ、「美とはなにか?」という問いには「生きていて良かった、元気が出たと、生きるということに対して前向きになる気持ちを感じさせる働き」が美であり美的感動だと説明します。「美は生きることを肯定し応援する感性である」と結論付け、生きていくための本能であるといいます。優れた芸術の要件として「プロセスが見えること」を挙げ、絵画に限らずすべての領域の作品でプロセスが見えることが、芸術と工業製品を区別する要件の一つと説明します。「類型のない作品を生むにはどうしたらいいか?」という問いには、「地球上、また歴史上においても自分とまったく同じ人は絶対に存在しない。つまり、自分自身のすべてを画面に出せば、類型のないものが必ずできる」と説明し、その上で「美術史上のどの文脈の流れに中に自分が位置しているか、という自覚」が大切といい、それがないと美術史的に宙に浮いてしまうと説明しました。「類型のない作品を生むためには、過去を知ることが大切で、伝統は、常に類型のない新しいものの積み重ねである」と説きました。最前線で制作する作家として、現在考えていることを漏らさず伝えていただいたように感じました。  ものの見方と論理的な制作の思考は多くの示唆に富み、非常に有意義な講演となりました。

2023.3.31

名芸卒業生トークイベント「私の出発点~そういえば、原点(ルーツ)は、名芸だよね」

名芸卒業生トークイベント「私の出発点~そういえば、原点(ルーツ)は、名芸だよね」  卒業制作展 50回記念講演会第2弾は、2023年2月19日(日)、美術、デザインの世界で活躍する本学OB、OGがパネラーとして参加するトークイベント「私の出発点~そういえば、原点(ルーツ)は、名芸だよね」を行いました。  参加者は、荒木由香里さん(アーティスト、2005年卒業、コミュニケーションアートコース非常勤講師)、石川幸奈さん(日本画家、2013年卒業)、白澤真生さん(drowrope/グラフィックデザイナー、2005年卒業、テキスタイルデザインコース非常勤講師)、水野里奈さん(アーティスト、2012年卒業)、服部隼弥さん(Bouillon/デザイナー、2009年卒業、スペースデザインコース非常勤講師)、藤原葵さん(アーティスト、2016年卒業)の6名。6名のうち3名が現在非常勤講師を務めており、学生にとって先生であり、身近な先輩でもあります。どんな作品を作って、どんな学生生活を送っていたのか、教えを受ける学生にとってはとても興味深いトークイベントとなりました。ファシリテーターをスペースデザインコース 駒井貞治教授、コミュニケーションアートコース 松岡徹教授(松岡教授も本学OB)の両氏が務め、トークを大いに盛り上げました。  トークは、Q1.学生時代はどんな学生だった、Q2.将来どんなふうになりたいと思ってた、Q3.卒業制作の思い出は?の3つの問いに、それぞれが答えていく形で進められました。  Q1の問いには、「全力でなんでもやるタイプ。遊びも実技もバイトも。よく倒れてた」(荒木)、「真面目な学生。でも、学校よりも家にこもって制作しているタイプ」(石川)、「テキスタイルだったけど、スペースデザインかインダストリアルデザインの部屋にいる方が長かった」(白澤)、「皆で批評会をしたり充実してた。毎日、ずっと残って制作してた」(水野)、「家が遠くて通学するよりクルマに寝泊まり。自分の興味のある授業は受けても他は……」(服部)、「洋画棟の環境が良くて喜んで描いてばかりいた。メンバーも良かった」(藤原)と、それぞれの学生時代を開陳。  Q2については、一様に学生時代からの希望を叶えているといいます。ただし、「学生の頃には、もっと有名になっているつもりだった(笑)」(白澤)という声もあれば、「アーティストになりたいと思っていたけど、トリエンナーレに出品することになるとか、具体的に想像していませんでした」(藤原)など、それぞれに学生時代の思いと現在を振り返り、考えが変わったことなどの意見が出されました。  Q3については、見せたくないという男性陣に対し、「体力面で不安がありつつも、考えていることを精一杯やった」(石川)、「言ったことは必ずやらなきゃいけないという庄司達さんの教えを守って、武士みたいな気持ちでやっていました(笑)」(荒木)、「制作しているときにたまたま学校に来られていた奈良美智さんが見てくれて、いいねといってTwitterにアップされ、すごく励まされました」(水野)と貴重な経験も飛び出しました。  印象的なのは、デザインとアートのちがいなのか、真摯に作品に取り組む女性陣と、自分の専攻以外のところで見聞を広めさまざまな考え方を作品に取り込んでいく男性陣。一見すると男性陣の行動は不真面目そうに見えますが、寄り道しながらも作品の幅や奥行きを広げていっているように感じます。あらためて、それぞれが自身に適した方法を見つけていったのだと考えさせられます。  最後に、学生へのメッセージとして「とにかくたくさんいいものを見て、経験を増やして欲しい。目を肥やして欲しい」(荒木)、「学生時代に画材の特徴や技法についてもっと聞いておけば良かったと後悔。聞ける環境なので、どんどん聞いてチャレンジして欲しい」(石川)、「大きな目標を立てると、今やるべきことが見えて来る。モチベーションも上がるのでリアルな目標を立てて」(白澤)、「あきらめないことが大切。もしダメになっても、自分になにができるかを考えてもう一度やってみて欲しい」(水野)、「デザインの仕事では奇をてらいがち。背伸びせず自分の生活目線で無理していないかを考える、素直な仕事を」(服部)、「今できることに全力で取り組んで欲しい。その経験が1度でもあると心の支えになってくれる」(藤原)、と温かいアドバイスが贈られました。  このほか、学生時代にお世話になった恩師の思い出など、ファシリテーターも含めて賑やかなトークイベントとなりました。

2023.3.7

名古屋芸術大学ローターアクトクラブが企画、卒業・修了制作展50回記念 チャリティーオークションを開催

名古屋芸術大学ローターアクトクラブが企画 卒業・修了制作展50回記念 チャリティーオークションを開催  卒業・修了制作展 開催50回を迎えるに当たり、今年度は大学初の試みとして2023年2月25日(土)に、「名古屋芸術大学 チャリティー オークション」を開催しました。名古屋芸術大学ローターアクトクラブは、地域社会で活動する人や団体とコラボレーションし共にボランティア活動を行うサークル。これまでにもNPO法人や他のローターアクトクラブと協業を行うなど、例年、さまざまな活動を行ってきました。今回のチャリティーオークションでは、売上の一部をポリオ根絶を支援するロータリー財団に寄付しの活動を知ってもらうこと、そして、学生作品を販売することで作品と社会のつながりや作品の市場価値を知ることを目的として企画されました。オークション開催の前に、名古屋芸術大学ローターアクトクラブ 幹事の鮫島朱さんからは「ここにあるのは、いまはまだアーティストの卵たちの作品ですが、将来、必ずや世に出てくる人たちのものだと思います。そうした作品に熱い視線を送って下さり厚く御礼申し上げます。自分を含め学生にとっていろいろな経験をさせていただき、このことにもお礼を申し上げます」とあいさつがありました。 エンドポリオ  オークションの司会進行は、声優アクティングコース 福満薫講師と、声優アクティングコース3年 伊藤大雲さんが務め、軽快なトークで会場を大いに盛り上げます。出品も気軽に買えそうな学生作品から十万円を超える大作、特別客員教授のサイン入りCD、OBである映像作家のOSRIN氏のサイン色紙、長谷川喜久教授による“似顔絵ミニ掛け軸”や松岡徹教授による“にがお胸像”、果ては萩原周教授による“法螺貝”などなど、バラエティ豊かな品々です。教員推薦の作品もあり、平面と立体それぞれに長谷川教授と松岡教授が解説、作品鑑賞としても楽しめました。学生作品とはいえ制作費と制作時間からしても非常に割安なものもたくさんあり、ときには激しい競り合いとなり会場は大いに沸きました。  残念ながら入札されずに終わってしまった作品もありましたが、展覧会 とは異なった難しさを感じました。自宅に飾るという観点では、展覧会で展示するのとはまた異なった要素が必要に感じさせます。多くの作家が販売するための作品を分けて制作しているということにも納得です。ぜひこの経験を糧にしていってもらいたいと願います。 ●53品出品中44点落札 ●総落札金額721,500円 ●うち寄付金額183,200円(予定) この寄付金につきましては、公益財団法人ロータリー日本財団を通じ、ポリオ根絶の支援金として寄付をさせていただきます。 ローターアクトクラブの活動に興味がある方は、こちらのサイトをご覧ください。

2023.3.1

第50回 名古屋芸術大学 卒業制作展 名古屋芸術大学大学院 修了制作展

第50回 名古屋芸術大学 卒業制作展 名古屋芸術大学大学院 修了制作展 更新情報 2023.4.21 【EVENT】「第5回 名古屋芸術大学展 卒業・修了制作選抜」を開催 2023.4.12 【EVENT】卒業制作展記念講演会 OSRIN氏「どんぐりのせいくらべ」 2023.4.1 【EVENT】卒業制作展 50回記念講演会 千住博氏「学生の皆さんに伝えたいこと/創造の現場より」を開催 2023.3.17 賞典を作品リストに追記しました。 2023.3.14 【EVENT】名芸卒業生トークイベント「私の出発点~そういえば、原点(ルーツ)は、名芸だよね」 2023.3.7 【EVENT】名古屋芸術大学ローターアクトクラブが企画、卒業・修了制作展50回記念 チャリティーオークションを開催 2023.2.28 L棟(体育館)・アート&デザインセンター(B棟)の作品を公開しました。 2023.2.27 U棟の作品を公開しました。 2023.2.25 G棟・屋外展示の作品を公開しました。 2023.2.24 X棟の作品を公開しました。 2023.2.23 B棟の作品を公開しました。 2023.2.22 A棟・F棟の作品を公開しました。 2023.2.20 Z棟の作品を公開しました。 2023.2.18 H棟の作品を公開しました。 2023.2.17 K棟の作品を公開しました。 ページ内検索 コースから検索 展示場所から検索 「第5回 名古屋芸術大学展 卒業・修了制作選抜」を開催 卒業制作展記念講演会 OSRIN氏「どんぐりのせいくらべ」 卒業制作展 50回記念講演会 千住博氏「学生の皆さんに伝えたいこと/創造の現場より」を開催 名芸卒業生トークイベント「私の出発点~そういえば、原点(ルーツ)は、名芸だよね」 名古屋芸術大学ローターアクトクラブが企画、卒業・修了制作展50回記念 チャリティーオークションを開催 第48回 | 第49回

2017.3.10

第44回名古屋芸術大学卒業制作展記念講演会 箭内道彦氏による記念講演会を開催しました

第44回名古屋芸術大学卒業制作展記念講演会 箭内道彦氏による記念講演会を開催しました 2017年2月21日(火)〜2月26日(日)にかけ、愛知芸術文化センター(8階・12階)、名古屋市民ギャラリー矢田、本学 西キャンパスの3会場で「名古屋芸術大学卒業制作展」が開催されました。この卒業制作展を記念して、最終日の2月26日(日)に、愛知芸術文化センター12階、アートスペースAで、卒業制作展記念講演会が行われました。今回は、クリエイティブディレクター、東京藝術大学美術学部デザイン科准教授の箭内道彦氏をお招きして「新人と旧人」という演題でお話しいただきました。 はじめにデザイン学部長 櫃田珠実教授から箭内氏の紹介がありました。制作した数々のCM、またNHKのMCを務めたことなどから、広告業界のみならず広く知られる存在であり、特に東北大震災以降は、人と人、人と社会をつなぐ活動に力を入れていることやいつもパワーがあり熱く優しいメッセージを届けてくれることなどの説明がありました。社会に羽ばたこうとする学生を、熱いメッセージで送り出して下さいと、紹介されました。 拍手とともにすこし照れるようにしながら登場した箭内氏は、トレードマークの金髪に、花火の柄のスカジャンにバラの模様のボトムと、いつもの派手な服装で現れました。立ち上がって挨拶をはじめると自己紹介用の映像を上映してくれました。「普段は、クライアントの企業に見せるもので、恥ずかしい……」と前置きして始まりました。2003年に独立して以降の経歴、TVで見かけたCMのスチル、などコンパクトにまとめられています。改めて見てみると、TOWER RECORDS、サントリー、資生堂、FUJIFILM、リクルート、パルコなど、ナショナルブランドの仕事をそれぞれに長く続けていることがよくわかります。また、TV、ラジオ、映画監督、猪苗代湖ズでの活動など、活動の幅の広さも目を惹きます。 講演は、名古屋との係わりから始まりました。NHKの「トップランナー」という番組で、西野カナさんと二人でサンシャインサカエの観覧車に乗ったと会場を沸かせ、猪苗代湖ズの「I love you & I need you ふくしま」の話になりました。2011年3月11日の6日後、17〜19日の3日間、名古屋に来てレコーディングしたといいます。計画停電で電車も間引きされ、役所、学校、公共の場の電気は落とされ暗くなった東京。電力に配慮し、名古屋に来てレコーディングして東京に持ち帰り、福島に音楽を届けました。当時を振り返り「重く暗い東京に対し、名古屋は何もなかったかのように眩しく、すこし苛立ちました。でも、そのときは自分でも地に足がついていない行動をしてた。日本全国で落ち込んでしまっては、東北を支えてもらうことはできない。名古屋は、全国と被災地とを考えるきっかけとなりました」と話しました。 「新人と旧人」とは、新しく社会人になる「新人」と、社会人2年目以降の人すべてを「旧人」として、新人の役目を説明しました。新人の役目は「古い人たちに教わることだけではなく、旧人を刺激することにある。今年の新人はひと味違うなと思われることが社会との出会いの大きなコツ」と卒業生を鼓舞する言葉をくれました。「社会に出ると、初日で勝負が決まると思うんです。新人は、借りてきた猫のよう。でもじつは迎える社会の側はすごいやつが来たらどうしようと怖がっています。だから、ぶちかました方がいい!」と話します。その上で、美術大学で学んできたことは、非常に意義深いことであるといいます。社会に合わせるだけではなく、自分の視点を持って考えること、学んできたことを生かすことの意義を唱えました。 ここで、うれしいサプライズがありました。一人で話すのは慣れていないという箭内氏は、会場にいる画家の杉戸洋氏を壇上に上がるよう求め、ここから二人の対談という形式になります。杉戸氏は、東京藝大准教授(元本学デザイン学科教授)を務めており、今回の箭内氏の講演のコーディネイトに尽力いただいた存在です。二人のクリエイターによるお話は、穏やかな雰囲気のなかにも、ドキリとさせられる言葉がたくさん含まれる、ユニークなものになりました。 箭内氏は、どこかで本で読んだと前置きし、「百人に一人の能力がある人が、3つ特技を持てば1/100のが3つで1/1000000、百万分の一の人になれる。人の個性とはそんなもの。僕は、デザインとロック、もうひとつはまだ探しているところ。3つ目を育てるのは大学を出たあとかな」 それに応えて、杉戸氏は「僕は、そんなにないですよ……。バイクかな、どれもちょっとずつ(笑)。大学入試の面接官をやりますけど、よく考えてみると、その人の3つ目を探して変なことを聞いているのかもしれない」と返します。 また、箭内氏は美大を応援したくて「美大のススメ」という本を出したいと思い出版社に企画を持ち込んだりしたものの、需要がないとのことで却下されたことを杉戸氏に相談。杉戸氏は「タイトルが良くない(笑)」と返答。美大生は、物事をまとめず解体したがる特徴があること。そして、課題を発見して持ち続け、生涯、課題に取り組みくすぶっている感じが抜けない。でもそれが美大生の強みと語りました。 箭内氏は、自分の経験から、なりたい職業よりもやりたいことを重視するよう、やりたいこととその目的が明確であれば、どんな状況になっても叶えられること。さらに、現代の社会は、さまざまな分野が断絶され、言語だけでは関係が修復できないところにあり、そんな時代だからこそ、芸術、美術、音楽などのアートが必要とされている。有史以来、最もアートが社会に必要とされている瞬間であるとの認識を示しました。 最後に、「大学を卒業し社会で武者修行をして、人と知り合い、失敗した経験で得たものを、自分の育った場所に恩返しして欲しい。そうすることで、もっと社会は良くなっていくはず」とまとめました。 現在の自分の考えをストレートに歌詞にしたとして、音速ラインの「生きてくことは」挙げ、PVを上映して講演は終了となりました。 杉戸氏との対談は、思わず吹き出してしまうような可笑しい話題を織り交ぜながらも熱のこもったもので、学生たちもしっかり熱いエールを受け取っていたように感じました。 一般からの関心も高く、開場と同時に多くの方が訪れました デザイン学部長 櫃田珠実教授から箭内氏を紹介 照れながら箭内氏登場 普段はクライアントに見せている自己紹介映像。活動の幅の広さに驚かされます 会場には本学4年生のほか、申し込みで一般からの入場も。他大学の学生と思われる来場者も多く見られました うれしいサプライズ。会場から杉戸洋氏登場 1/100が3つで1/1000000、3つ目を育てるのは大学を卒業してから なりたい職業よりも、やりたいことが大事。やりたいことがはっきりしていれば、必ず叶えられる 杉戸氏「名芸の良さは、学食が美味しいことと画材屋。画材屋の兄ちゃんに助けられたことあるでしょう?」 会場は大きく頷く 音速ライン「生きてくことは」 PVをじっくり鑑賞 質疑応答。「自分の力不足を感じています。どんなことをしていけばいいですか?」 箭内氏「あなた、何かやってくれそうな顔立ちしてる(笑)。たくさん失敗すればいい」